女友達② -0
***
走っていた。
まっ白な場所をただ走っていた。
自分の周りには何もない。白く塗られた空間というのとも違う。ちょうど昼まで惰眠を貪った休日にカーテンを勢いよく開いた瞬間の、光が一斉に眼球めがけて押し寄せてきたようなそんな無垢で暴力的な場所だった。
視界に現れるのは一定のリズムで前後する自分の両腕だけ。
自分に肉体があるということが、なんだかひどく場違いであるように感じられた。
ああ、また私は夢を見ているのだ。
近頃同じ夢を何度も見る。夢のなかでの私は決まってこの何もない空間をひたすら走っている。
どこかへ向かっているのか。それとも何かから逃げているのか。経緯も目的も一切合切が不明だった。
でも夢なんて大概そんなものだろう。夢のなかでは至極真面目に思考しているつもりでも目が覚めて思い返してみれば支離滅裂で、「なんだったんだ、あれは」となるのが毎度のパターンだ。
しかしながらそれはランニングというにはあまりに冗長で、ジョギングというにはあまりに必死な走行であった。
「 」
そのとき、ふと背中ごしに声が聞こえたような気がした。
振り返ろうとしたけれど、この身体はプログラムされたロボットのように決められた動きをひたすら繰り返すだけだった。
どうやらここでは身体を自由に動かすことができないらしかった。
そのうちに、私はなぜ振り返ろうとしていたのかも解らなくなってしまった。
声はもう聞こえない。
***
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