第5話 『ガラにも無く』
夢を見た。
誰かが歌っている。
心地よいので聞いていたら、ふと視界に歌っている人物が映る。
ちっちゃい花輪みたいな物を手に楽しそうに歌う女……の子?
なんだ女かと思って気付く。
夢じゃない!
その瞬間に完全に目が覚める。
「うぉわ!」
俺が寝てるすぐ傍に女の子が居たのだ。
驚いて飛び起きると、女の子はちょっと驚いた風だったがすぐにニコニコと微笑み、
「ごめんなさい、余りにも気持ちよく眠っているので起こすのが忍びなくて……。
でも、街の外でお一人でお休みになると危ないですよ」
「え? は、はぁ」
寝起きなせいか思考がまとまらない。とりあえず生返事をしてしまう。
「お姿から魔法使いの方かしら?」
「ん~? んっん、そうですね」
「私、魔法使いの方と直接話すの初めて。宜しければお話をしても?」
嬉しそうに話すこの子、綺麗な金髪にウェーブのかかったお姫様カット、そしてRPGにありがちな街娘って感じの服装の割には何か妙に品がある。
どう見てもお姫様クラスかお貴族様って感じだな。
めんどくさいからトンズラしようかとも思ったが、この手の人種に出会った事がないので興味があったのと、何より中学生ぐらいにしか見えないのが俺を引き止めた。
……ん? ロリコンじゃないよ?
俺の定義で16歳以上の女は男を利用するだけ利用して裏切るとなってるからだ。
それ以下には優しいデス!
とりあえずその子の近くに座る。
「暇なんで、いくらでも」
「まぁ、そうなんですか?」
ええ、俺はねと思いながら、ふと近くにタンポポが咲いていたので取る。
これタンポポだよね? やはり植物は同じような物があるんだなと思いながら、花を取る。
「何をされているんですか?」
「え? タンポポ笛ですが知りませんか?」
「タンポ……ポ? アルマードの花の事ですか?」
ああ、名前は違うのね。これアルマードって言うのか。
俺は花を取って茎だけになったアルマードを口につけて吹く。
ぶーーーーー。
お、出来た。これ咥えてやると苦いんだよね。
と、思ってたら女の子がびっくりしてキラキラした目でこちらを見てくる。
「すごいすごい! そんな事出来るんですね。それも魔法?」
「いや、誰でも出来る遊びですよ」
女の子は手近にあったアルマードの花を同じようにやって吹いてみる。が、鳴らない。
頭に? が飛び交ってるような表情を浮かべて、更に吹こうとして顔をしかめる。
あ、咥えたな?
「咥えたら苦いんで。後、音鳴らないのは長さかな?」
適当な長さに調整してやる。
ぶーーーーーーー。
鳴った。
嬉しそうに何度も鳴らす女の子。
うーん、何だか知らんが良い事をしたような気がする。
そう言えば今思い出したが、これで俺がここに居たって証人が出来たって事か、重ね重ね良かった良かった。
その時ふと、遠くから誰かが呼ぶ声が聞こえてくる。
「あ、いけない。私そろそろ戻らなくては。お相手してくれてありがとう、えっと……」
「サイトって言います」
名乗ると女の子はにっこり微笑んで、
「ありがとうサイト、もし良かったら明日もまたお会いできます?」
「ん? いいですよ」
普段なら『うるせーよ』とか言いそうだが、流石に定義から外れているので毒が出てこない。
女の子は嬉しそうにしながら、テテテと向こう側へ駆けていく。
「私アリア! またねサイト~!」
最後にそう叫んで手を振ってくる。
手を振り返しながら、アリアが消えるまで眺める。
うーん、思わず約束してしまった。
自分のお人好しにたまに驚くな。ま、予定も無いしいっか。
俺はアリアの姿が完全に見えなくなった所で『マニュアル』先生に部屋へと戻してもらった。
部屋に戻ってまっぱタイムを経て、来ました来ました50万!
な、なんなんだ、この厚み……! くぅ~っ!
よーっし、とりあえず親にでもどーんと20万ぐらい進呈……だめだ……泥棒したとか言われそうだ。2万ぐらいにしとこう。
俺はそっと1階の居間に2万円置いておく。
ついでにもう夕方だったので冷蔵庫から食料を漁る。
さーて、それでも前のと合わせて60万強か~。
この調子だと車でも~~~~乗らないからイラネ。
じゃ、パソコンでもハイパースペックへ交換~~しなくても使えてるからイッカ~。
う~~ん? 何だ意外と使い道が無いな。
銀行に預けたいが預けると収入がバレるしな、税金怖い怖い。
なんか一気に泥棒さんが怖くなるが、仕方ないとりあえず机にでも入れておくか。
その日はそのままゲームして寝る事にした。
え? もちろんゲームにはどどん(2万円程)と課金しましたが何か?
明日はまた向こうに行くとしようっと、うへへへ。
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