第4話 嘘
いい天気だ。雲一つない青空だ。
僕は、屋上にきていた。
階段に腰かけながら、スマホでSNSを見ていた。
綺麗な写真、楽しそうな写真、みんな笑顔だ。
声が聞こえてきそうなほど。
「これってさ。フェイクって知ってた?」
僕は、声のする方に振り向いた。
そこには、僕が居た。
もう一人の僕だ。
それは、過去の僕かもしれないし、ずっと未来の僕かもしれないが、確かに僕だった。
そう感じた。
「ん」
いつの僕か分からないが、もう一人の僕が言った。
「その写真だよ。ウソだよ」
「えっ」
僕は、スマホの画面を見つめる。
「写ってるのは、全てウソだよ。
その楽しそうな人達は、友達なんかじゃない。
雇われていたんだ。代行ってヤツ、ダ・イ・コ・ウ」
「コイツは、全てウソなの?」
「そんなもんじゃない、世の中なんて」と、冷めた返事。
「ソイツらは、生きていないかも」
もう一人の僕は、ニャッと笑うと背を向けて立ち去った。
確かに生きていないかもな。
僕自身も怪しいもんだ。
生きてるか、生きていないか、何で確かめる?
身体を傷付けてみる?
痛いって感じたり、血が出たりするかもしれない。
それって、生きてるって事になるのかな。
感じているのは、僕だけ。
痛いって感じているのは、僕だけ。
生きてるって思っているのは、僕だけ。
なんだ、わからないじゃないか。
この世は、全てウソかもしれない。
多分、ウソだ。
そうでなければ、僕がこんなところにいる訳ないじゃないか。
僕が、こんなに悩むはずないじゃないか。
悩む?
この僕が、悩んでいる?
そうだ。上司に、いじめられていたんだ。
パワハラってヤツ。
何をやっても「ダメだ、ダメだ」って認めてくれなかった。
必死で、僕を否定するのだ。
僕は、教わった通り仕事をしているのに。
完璧に仕事をこなしても、
「君は、言葉どおりしか、理解しないのか?
察するってことは、ないのか?
言葉は、一つのことしか意味しないとでも思っているのか?」
と、訳のわからないことをわめく。
訳のわからないと言えば、ヤツは、論破って言葉が好きだった。
「論破して、オレを納得させてみろ」って、挑発してきたが、
間違っていることを、変な論理で納得させることにどんな意味があるんだ。
本当にわからないヤツだ。
自分が頭がいいと思っている。
私が居なくなっても別の者が同じようにいじめられる。
ヤツが会社に居る間は、会社の成長を邪魔する根源だ。
「ヤツを排除しなさい。社長命令です」
僕の頭の中に声が流れた。
僕は、立ち上がり屋上の柵から、地上を眺めヤツを探した。
ヤツだ。
僕をいじめているヤツだ。
丁度、真下を歩いている。
そう思った時、僕は、アイツに向かって飛び降りていた。
社長の命令だから、仕方ない。
僕は、社長に雇われたアンドロイドだから。
「会社の成長を邪魔するモノを排除することが、あなたの任務です」
と言う、AIの社長からの任務を遂行しただけだ。
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