第2話 第〇次世界大戦

「ん?」

 僕は、暑くて目が覚めた。

「何時?」

 僕は、枕元のスマホを手に取ると画面を見詰めた。

 時計アイコンは、八時を過ぎていた。

 SNSのアイコンをタップしたが、反応がない。

 スワイプもできない。

 電波は、バリ。電池もフル。

 なのに、反応なし。

 スマホの電源を切る。スマホの電源を入れる。

 画面が明るくなり、ロゴの表示。

 キー入力をし、立ち上がるのを待つ。

 

 キュキュキュー。


 スマホのバイブも加わり、僕を慌てさせた。

「アラート?何のアラート?」

 メッセージがない。

「なんだこれ?」

 僕は、慌ててスワイプしまくった。

「知らないの?」

 横に寝ていた娘が頭をあげて、答える。

 そうだ、昨日この娘と知り合って、泊めてもらったんだった。

 彼女は、眠い目を擦りながら、上半身を起こした。

 彼女の甘い香りがした。

「知らないって?」

「……ったく、ニュース見てないの?」

 僕は、頷いた。彼女は面倒くさそうに答えた。

「世界大戦。第〇次世界大戦勃発ってとこかな」

「何だいそれ、大戦って、戦争?」

「そう、戦争」

「あ、危ないじゃん。どっか逃げなくていいの?」

「どっかって、安全なトコなんてないよ」

「とにかく、避難しなくちゃ」

「避難したって、死ぬときは死ぬだけ。アチッ・・・・・・」

 と、ゆっくりと彼女は立ち上がり、冷蔵庫からアイスキャンデーを取り出し、

一本、くわえるともう一本僕に差し出した。

 僕がアイスキャンデーを受け取ると、僕の横に座った。

「戦争って言ったって、人間同士じゃないよ。

 コンピュータ。つまり、AIね」

「AI?」

「各国は、独自のAIを持っているでしょ。

 そのAIによって、国の貧富が決まるの。

 昔でいえば、化石燃料を持ってるとか、軍事力があるとか、

 戦争に勝ったとか」

「AIが戦争?」

「そう、AIが自分の能力を競っているの。

 人間を超えてしまった彼らには、AI同志の性能比べが生きがいって訳?」

「そうなんだ。僕らはどうすればいいの?」

「何もできないわ。彼らの競争のとばっちりをくわないように、祈るしかないわ」

 彼女は、僕のアイスの棒を取り上げると、ゴミ箱に捨てに行った。

 戻ってくると、僕の正面に猫の様に這いつくばってきた。

 彼女の顔が、僕の顔の前で止まった。

「あなたは、戦争の事より心配することがあるんじゃない?」

と言って微笑んだ。

 僕は、何のことだろうと身構えた。

「私は誰でしょう?私の名前を言ってみて」

「えっ」

 僕は、生唾を飲みこんだ。




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