第8話-前

「ふむなるほどこの者を門番か……確かにこの娘にそなたの権限のほんの一部でも渡せば、あの扉に肉体ごと喰われるじゃろう」


 簡単に王に京介が状況を説明したところで、初めに言われたのがこれだった。


「ええ、このままではとても後を継がせるわけにはいきません。しかし彼女には私以外に宛てがありません。それに、下手を打てば向こう側がこちら側へ抱いている印象が、余計に王のご意向に沿わない方向に向かうでしょう」


 京介は難しい顔をしてそう答えた。


「儂とてむやみにそちらの者たちを刺激したくはない。向こうがこちら側へ異常なほど恐れを抱いているのは百も承知じゃが、この世界の多くの者たちは平穏を心の底から望んでおるのじゃ……」


 ふう、と王は息を吐いた。そして沙夜を見て、

「今の日本に魔力がある場所も、魔力を持って生まれるものもごくわずかじゃ。じゃが君は幸いにも魔力を体内に貯めることが出来る体質のようじゃ。肝心の魔力は無いに等しいが、それもこちらの世界でこちらのものを飲み食いし、こちらの世界で魔力の制御方法を訓練しながら暮らせば、じきにあの門を管理できる下地ぐらいは出来よう」


 京介は恐る恐る沙夜を見た。沙夜は俯いていて、その表情をうかがい知ることは出来ない。彼女は声を震わせ、

「わかりました。それが必要なことなら……」

下を向きながら返事をしようとしていた。

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