第7話

 沙夜があの厳めしい門をくぐると、そこは森の中だった。今まで沙夜は自然とは縁遠い生活を送っていたから、森というだけで新鮮に見えた。地面は柔らかい草でふかふかしていて、木が生い茂っているというのに日の光が優しく森を包んでいた。


 体験したことのない光景に呆然としている沙夜とは対照的に、京介は「そろそろ迎えが来るはずなんだけど……」と呟いただけで平然としている。


 沙夜がただ立ち尽くしていたときだった。突如としてパチンと指を鳴らす音が聞こえてきた。慌てて振り返ると、そこには淡く輝く銀の髪と透き通った青の瞳を持つ、燕尾服に身を包んだ少年が、

「王城にご案内いたします」

そう言って恭しく礼をした。

 そして指を鳴らすと、目の前には豪華な調度品で揃えられた石造りの部屋と、大きくて立派な椅子に座る恰幅のいい威圧感を放っているかのような老人がそこにいた。


 状況を飲み込みきれてない沙夜に追い打ちをかけるように、

「王の御前です、ヴェスペリア公、異国の客人殿」

というだけ言ってその少年はいつの間にやら姿を消していた。

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