第7話
沙夜があの厳めしい門をくぐると、そこは森の中だった。今まで沙夜は自然とは縁遠い生活を送っていたから、森というだけで新鮮に見えた。地面は柔らかい草でふかふかしていて、木が生い茂っているというのに日の光が優しく森を包んでいた。
体験したことのない光景に呆然としている沙夜とは対照的に、京介は「そろそろ迎えが来るはずなんだけど……」と呟いただけで平然としている。
沙夜がただ立ち尽くしていたときだった。突如としてパチンと指を鳴らす音が聞こえてきた。慌てて振り返ると、そこには淡く輝く銀の髪と透き通った青の瞳を持つ、燕尾服に身を包んだ少年が、
「王城にご案内いたします」
そう言って恭しく礼をした。
そして指を鳴らすと、目の前には豪華な調度品で揃えられた石造りの部屋と、大きくて立派な椅子に座る恰幅のいい威圧感を放っているかのような老人がそこにいた。
状況を飲み込みきれてない沙夜に追い打ちをかけるように、
「王の御前です、ヴェスペリア公、異国の客人殿」
というだけ言ってその少年はいつの間にやら姿を消していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます