第6話
「どうして京介さんは、門の管理について私に教えてくれないんですか?」
京介としては全く予想できなかったタイミングで、沙夜は居心地が悪そうにそう尋ねてきた。
「うーん、今沙夜ちゃんはそれどころじゃないと思ってたから……気持ちが落ち着いてからでいいかなって」
そう嘘偽りない気持ちで沙夜に語りかける。あれだけの事があったのだ、その事柄を消化するには時間が必要だろう。京介はそう考えていた。
「でも、私がここに来てから二週間は経ちました! 明日で夏休みが終わっちゃうのに……」
京介はすっかり忘れてしまっていた、自分と彼女たちの決定的な違いを思い知った。京介にとって二週間は瞬き程の短い時間だが、目の前の少女にとってはまるで違うのだ。それを忘れてしまって、彼女の焦る気持ちに気が付くことが出来なかった。
「ごめんね、大切なことを忘れてしまっていたみたいだ」
京介は素直に謝る。この件に関しては完全に京介の落ち度だ。
沙夜に余計な心配をこれ以上かけさせないように、京介は正直に今の状況を説明することにした。
「門を管理するには、魔力が必要なんだ。沙夜ちゃんのように魔力をほとんど持たない存在の場合、門を維持するだけで命を吸い取られて死んでしまう可能性が高い。今の日本人で魔力を持って生まれる人間は殆どいない。だからあの役人の人も魔力の事がよくわからなくて、沙夜ちゃんのような全く無関係の人でも問題ないだろう、って考えてしまったんだろうね」
それを聞いた沙夜は、
「じゃあ、私は必要ないんでしょうか……」
途端に、表情を暗くしてしまった。ある程度予想していたとはいえ、実際そのような反応をされてしまうと京介は本当に申し訳ない気持ちになる。
しかしそれを微塵も感じさせないようにわざと明るく、
「まだ沙夜ちゃんがこの件で何もできないって決まったわけじゃない。だから僕はこれから知恵を魔界に借りに行くんだ」
そうきっぱりと言うと、戸惑う沙夜の手を引き魔界への扉を開けたのだった。
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