彼には大志があった。自らが国を治め、良き世を築くことを望み、先王を排し自らを望帝と名乗る。
小国に稲作を広め、水害に苦しむ国民を励まし、なんとか河を制する方法をとさぐる。
そこへ流れ着いたのは異国の若者。彼とともに治水に励み、国をもっと豊かにする。望帝はその名の通り、望みをもたらす帝となるはずであった。
この物語は、帝としての男の大志と、そばに頼れる者がいない彼の寂しさ、葛藤が描かれています。
そして最後は……。
途中から、結末の方向性は予測できましたが、やはり心に重くくるものがあります。
さまざまな作品で王や帝が登場しますが、彼らもまた一人の人間であって、さまざまな悩みを抱えているのだろうな、と改めて気づかせてくれる作品です。