第七節

 加速術式を試すため広間に戻ったザックは、ティターンの柄を両手で握り、上段に構えた。

 あれ、どのぐらい流せばいいんだろ。

 思案したが、それを確認するために来たんだろと、自分でツッコミを入れる。

 身体を流れるマナを、手を通して柄に流れ出し、峰に刻まれた術式が反応する。

 瞬間、峰から青白い光が噴出し、大剣は地面を打撃した。

 轟音と共に、地面には亀裂が走り、切っ先は地面に埋まっていた。

 今、目の前で起きた事象を必至に整理していると、土手の上から声が飛んでくる。


「爺ちゃん……!。凄すぎだろこれ! どうなってんだ!?」


「ティノが作った〝マナテリア〟に感謝することだのぅ。あれの応用みたいなものだと、ダーチが言っておった」


 どう応用したらこんな事になるんだ。

 そう思ったザックだが、先ほどの感覚を整理した。

 マナを流して感じたのは、大剣の峰が何かに押された感覚だった。目の前にある峰には刻まれた術式があるだけで、他は何もない。

 ティターンは加速し、腕が動き、地面を叩く。それ意外は何も分からない。

 だが、それでいい。これは慣らしなのだから。


「……爺ちゃん。模擬術式つかって、慣らすわ。俺っち」

「なら、お手前拝見といこうか」


 ザックは懐から、術式が書かれた紙を取り出し、イメージしながらマナを流していく。

 すると紙は飛んでいき、およそ20メートルほどの位置でピタリと止まる。

 紙が擦れる音を出しながら、魔物の姿に形を変えた。危険度4の二足歩行種、魔狼イプロス。

 その体躯は人間のそれと同じで、身長もザックよりも小さく170cm程度。だが、身軽な体から繰り出される剣捌きは、動作に間が生じないほど見事なもの。

 故に大剣の自分とは相性が悪く、上級エリアで対峙する度に殺されかけている。


 だが、それでいい。これに勝てなければ、英雄にはなれないのだから。

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