第四節

 鍛冶屋の奥に続く暖簾をくぐると、一変して暑くなる。鉄を熱するための炉が、複数設置されているからだ。

 この鍛冶屋には、二つの作業場が存在する。

 一つは鉄をたたいて成型する鍛造。もう一つが金属を溶かして液体にし、型に流し込む鋳造。

 今ザックが居るのは鍛造部屋になっており、鋳造部屋はまた別の小屋で行われている。


「あちぃ……」


 鍛造部屋の左奥、そこには父のベットルが懸命に剣を研いでいた。

 声をかけようとするが、後ろからアルビドの声が聞こえてくる。

 ザックは返事をし、気を取り直して声をかける。


「父ちゃん! 取りに戻ったぞ!」

「お前の右隣に置いてあんだろ! もってきな!」


 言われて目を向けると、それは立て掛けてあった。

 グラシアシリーズが二つ、ザックの身の丈ほどある片刃の大剣〝ティターン〟と、小盾〝アイギス〟。


 大剣を背負い、小盾を左腕に固定していくと、

「前行ってた加速術は峰に刻んである! マナを流せば流すほど加速するぞそれ!」

「ありがとう父ちゃん! ばっちし使いこなしてくるぜ!」


 応よ、と父から返事が帰ってきて、装備を整えたザックは部屋を出る。

 暑苦しい空気から開放され、鍛冶屋の表に出て風を浴びて涼み、一息つく。


「先に慣らしておくか」


 未体験の加速を確かめるために、ザックは広間へと戻っていった。

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