第二節
部屋を退出した兄妹は、支部の最上階に来ていた。
この階に壁は無く、昇降機と雨を遮る天井だけが存在している。
吹き抜けてくる風を感じながら、ティノは一個の笛を取り出して、大きく息を吸い、吹いた。
細い高音が空気に響いていくと、3羽のプライドイーグルがやってくる。
「ソラ、家の方まで頼む」
「クゥ、今日も元気そうね。家の広間まで、乗せてってくれる?」
そういうと、2羽は鳴き声をあげて返事とし、自分のパートナーの背に飛び乗って手綱を握る。
残された1羽が、自分のパートナーはどこだと言わんばかりに、鳴き声をあげた。
「悪い、ヒメ。ロレンはまた後で来るから、そんなに寂しがるなよ」
「また後でね。――それじゃお願い!」
ティノが大声で言うと、ソラとクゥは背にパートナーを乗せたまま、空に飛び立つ。
支部の塔を、撫でるように滑空していき、徐々に高度を上げていく。
兄妹はゴーグルを着け、後ろに振り向く。そこにはヒメが追随していた。
この3羽は夫婦鷲で、ヒメはその娘なのだ。
「相変わらず、親が大好きな嬢ちゃんな事で」
ヒメがついてくる事に、親心のような気持ちになったザックは町を見下ろす。
支部を中心に、円錐状に造られた町は、どこも活気があった。
――いい景色だ……!
ザックは、ソラの背から見る景色が好きだった。それは町だけでなく、任務で各エリアの上空を飛ぶときの景色も。
風が気持ちいい。願わくば、今日の新種が方向転換して、戻っていって欲しい。
この時間を出来る限りずっと、味わっていたいと思うからだ。
だが、その思いとは裏腹に、既に視界には家の敷地が見えていた。
敷地内の広間へと降下していき、やがて着地する。ソラから降り、クゥの方を見ると、名残惜しそうに妹も降りていた。
「ありがとうなソラ。また後で頼む」
「クゥちゃん、ヒメちゃん、また後でね」
そういうと、親子鷲は再び空へと飛び立っていく。
風圧で巻き上がる砂埃に顔を隠しながら、広間の土手に登り見送る。
「いい飛びっぷりだ」
「関心してないで、はやく行きますよ!」
プライドイーグルの速さに関心しつつも、さっさと行ってしまう妹を追いかけていった。
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