第3話 水餃子と乾拌麺
前回、マニアックな電車情報で数少ない読者の心をツルッと手放してしまったので、今回は手堅くグルメ記事でいこうと考えた。
何しろ台湾と言えば景色や観光名所などは二の次(台湾の方ゴメンナサイ)。とにかくグルメ大国なのだ。日本だって最近は世界中から日本食を食べに多くの人が来ているが、台湾だって負けていない。
中華料理をルーツに持つ台湾料理は我々が慣れ親しんだ物も大変多く、かつ目新しさや斬新さを十分に感じさせてくれる。
先に注意しておくがここでは細かい場所や店の行き方は書かない。そういうのはもっと親切で造詣の深い方がブログ等を書かれているのでもし本気で行く気になったら調べてみるといい。簡単に店の名前と何が美味いかくらいを書かせていただく。悪しからず。
まず台湾と言えばローカルな店だ。屋台や安飯屋。高級な店もあるがせっかく物価が安いのだから地元で愛される店に行かなくてはいけない。
ここで、台湾の飲食店での一般的なオーダー仕方を説明したい。何しろ少し特殊なので初めての外国人は大概まごつく。スマートなオーダーを身につければそれだけ早く美味い飯にありつける。いつだって我々観光客には時間がないのだ。
まず店内に入ったらオーダーシート(正式名称不明)が何処にあるか確認する。ある店では店頭にあるし、また別の店では各テーブルにある。オーダーシートにはメニューが記載されていて何を幾つ欲しいか数字を書き込むだけでいい。
他にも記入が必要な項目がある。
大概メニューの上の欄にあるのだが、「何人できてるか」と「座っている卓番」を書かなければならない。
卓番は後ほど店員が料理を運んでくるので分かるが、どうして人数を書かなければいけないのか理解できない。何しろよほどの高級店でない限り、台湾の飲食店はセルフサービスが主なのだ。箸もお手拭きも調味料も。水はセルフだろうがなんだろうが給水機が設置してあれば珍しい方で、ほとんどの店では客は飲み物を持ち込んでいる。さほど高いものでもないので食事の時に飲み物が必要な人は常にコンビニで買っておくと良い。水筒を持ち歩くのも一つの手かもしれない。今をもってしても人数を書かなければならない理由は謎である。
さて、最初は台北駅からほど近く、ローカル店ながら一応ガイドブックにも載るほど有名な店。
『豪季水餃専賣店』
名前の通り水餃子が美味い。海老入りか豚肉入りかを選べるがどちらも美味い。ただやはり台湾の餃子と言えば海老入りなのでよほど空腹でなければ迷わず海老入りを注文したい。
サンラータンや麺類など他のメニューも豊富だが、イチオシは水餃子で他の商品とはかけている情熱が違う。なのでここは水餃子一択で問題ないだろう。
プリプリの海老入り餃子をセルフで作った台湾醤油と酢、ニンニクを入れた自分好みのタレに絡ませひと息に頬張る。
アッツアツでツルツルの皮と海老と野菜の出汁が染みた餡が絶妙な具合に口の中に広がる。
美味い!そして何故か懐かしいというか馴染み深い味がする。
店内はこの手の店にしては広い方だが、お昼どきともなれば行列が出来るそうなのでそこは外して行くのが無難だろう。
店員は全員女性で店主と思しきオバさんも一見無愛想だが、外国人と分かるや否や親切に色々と教えてくれる。
ガイドブックに載ってるとは言えやはりローカル店なので日本語のメニューはなく英語もやや通じる程度なのでネットで予習していけばスマートな食事にありつけるだろう。
続いてもう一つ紹介したい。
台北駅から地下鉄ですぐの古亭駅という場所にある。店の場所は駅から近いが場所は分かりにくいのでGoogleマップが使える状態にしておいた方が賢いだろう。
乾拌麺。インスタントラーメンのことではない。こちらは水餃子と違ってあまり馴染みのない料理だ。
日本でいうところの汁なしラーメンやまぜそばのルーツではないかと推測される。だがこちらは至ってシンプルな料理で、茹でた中華麺に出汁とタレがかかっていて具は青ネギがひと摑みのみ。麺は素麺よりひと回り太いくらいだろうか。マルタイの棒ラーメンに似ている。
シンプルというかそれを通り越して家の手抜き飯かと思うくらいのルックスだが、癖がなくて意外とクセになる。
味は何とも形容し難いものだったが連れが面白い事を言っていたので引用させてもらう。
「湯切りに失敗して水っぽくなったペヤングみたいだ」
だそうだ。
私としてはそこまでネガティヴな物でもないとも思う。なるほどジャンクな味わいだが、日本人の中でもこのシンプルな麺の虜になっている人が少なからずいる。
確かにウスターソースの様な味もするし湯切りが十分でないのか味も薄めだ。「失敗ペヤング」と言えばそうとも言えるが、ドロドロの焼きそばに不思議なスパイス味と言えなくもない。これはこれで美味いと思える。真相は是非自分の舌で確認してもらいたい。
酢や辣油を絡めてカスタマイズし、グルグルにかき混ぜて食べる。そのシンプルな美味さたるや。日本ではなかなか味わえない。
乾拌麺自体でお腹いっぱいにするというよりはちょっとしたオヤツ感覚で食べる人が多いのか。江戸っ子が「蕎麦で腹一杯にすんなあ野暮だヨ」という感覚と同じだろうか。
この店は先にレジで注文と支払いをする。オーダーシートも用意されているが何故か先に注文する仕様だ。
この様に店によって微妙に形式が異なる。間違っても文句は言われないが、外国という慣れない場所での状況ゆえやはり重要なのは予習である。ガイドブックやネットでの下調べを怠らないよう、お勧めする。
とまあ、こんな具合に簡単な紹介をしてみた。グルメ編はもう少し続く。というか、今回は食べ歩きの旅行しかしていない。
しかし、キレイとは言い難い店内で異国の言葉が垂れ流されるテレビをBGMに、汗をだくだくかきながら何だか分からない代物を食って美味いとか美味くないとか言っているこの風景が何とも言えず良い。旅というのは、こういう小さな驚きと冒険に溢れていなければならない。
ではまた。
再見
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