第3話 Job

心地が良い。温かくて、それで――

「――ん。ここは…」

 いつの間にか私はベッドに寝かされていた。見慣れない部屋、私が寝ているベッドに机と蝋燭立て、本がはちきれんばかりに詰め込まれている本棚。それだけの質素な部屋。本は床にまで溢れていて、いくつも立派な本の塔が立っていた。

「…!」

私はベッドの隣の床で布団も無しに寝ているブロンドでくせ毛の少年を見つけて驚いた。

「君は昨日の――」

昨日の…おかしいな、お兄さんと話した後の記憶が無い。

すると少年がうっすらと目を開けた。

「…!お姉ちゃん起きたー!!」

そう言うと少年はドタドタと音を立てながらどこかへ駆けていってしまった。

「…こんなにぐっすりと寝たのは久しぶりだな。」

しかも人様の家で…

 しばらくするとお兄さんを引き連れて、少年が戻ってきた。

「気分はどうだ?」

「気分?」

昨日の記憶がまともにない私は何のことだか分からずにキョトンとしていた。

「熱があっただろ?」

「熱?」

すると手になにか冷たいものが当たった。氷枕だ。

「あ…」

ようやく昨日のことを思い出してきた。

「良くなったのなら良かった。俺はソウェイル・ルーンだ。こいつは弟の――」

「リズだよ!!」

ラグが答えるよりはやくリズが答えた。

「ありがとう。リズくん、ソウェイルさん。」

リズは満面の笑みを浮かべ、子犬のように駆け回った。ソウェイルは一瞬笑ったように見えたが、気のせいかもしれない。

「と、聞きたいことがある。」

聞きたいこと、嫌な予感がした。

「リン、お前のジョブはなんだ?」

ヒヤリと冷たい汗が流れ心臓が締め付けられる。

「ゎ、わか…分からない…」

呼吸が荒くなる。

「そうか」

あからさまに怪しい私を問い詰めることはしなかった。

ソウェイルは…優しい人だと思った。

 ジョブとは、その人の職業のことで、この世には様々な職種がある。

それは、それぞれの個性であり、輝けるものだ。

ジョブは人を選ぶ。選ばれたものだけが、導かれ才能を発揮する。そして人々はジョブの力を使い、旅をする。時に助け合い、滅ぼし合う。ジョブはそう、輝けるものであり、恐ろしいものである。

「大丈夫だ、俺が合うジョブを探してやるよ。ジョブ無しで旅をするのは危険だからな。…お前は…ジョブ無しでどうやってここまで来たんだろうな?」

ソウェイルはさも不思議そうに首を傾げた。

そうだ、ジョブが無ければゴーストを倒すことは出来ない。

ゴーストは人と対立する異界の者で人間とは共存できないと思っている。互いに傷つけあうのになんの意味後あるの?そう思っていた矢先、

『きゃああああーっ!!』

「な、なに?」

隣の部屋から聞こえたような。何が起こったの?

「――――っ!」

血相を変えて飛び出したラグのあとを追った。


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