第2話
バタン!
どれ位歩いただろうか、温かみのある小さな家に着いた。意識が朦朧としている。
「お兄ちゃんねー、怖いの!僕がいいよーって言うまでここで待っててね!!」
お兄さんは怖いらしい。それにしても体が熱い、頭が痛い。
「お姉ちゃーん、いいよー!」
お兄さんに見つからないようにか、シーッと人差し指を口元に引き寄せるジェスチャーをした。
ギシッ
床がきしむ。建ててから、随分と立っているようだったが、家こそは古いもののホコリ一つなく家具も丁寧に手入れされていた。前の部屋から明かりが漏れている。誰かいるのだろうか。
その部屋を通り過ぎようとしたその時だった、私が初めてお兄さんの声を聞いたのは。
「おい、リズ。何をコソコソしてるんだ?」
リズ…この少年の名前だろうか。
「兄ちゃん!べ、べつにコソコソなんてしてないけどっ!」
なんてわかりやすいんだろう、まぁ、そこがかわいらしいというか、なんというか。
「また猫でも拾って来たのか?」
ね、猫…
「違うもん!お姫様だもんっ!!…あっ」
焦りながらこちらに目を向ける少年に頷き、覚悟を決め、前に歩み出た。
「…あの、勝手に家に上がってしまって…すみません。」
そこには身長の高い茶髪でストレートの男がいた。
「兄ちゃん、この人おうちがわからないんだって。」
兄ちゃん、その言葉に違和感を覚えた。2人が全く似ていなかったからだ。
「おい、お前、家がわからないのか?」
分からない。私はそう答えた。
「お前、名前は?」
分からない。私はまたそう答えた。本当は自分が誰なのか、分かっているくせに。
「記憶喪失…ってところか、」
そうだ。そのほうが都合が良い。
「僕がつけてあげるよ!名前が無いと兄ちゃんにおい!とか、お前!って呼ばれちゃうからね。名前はねー、えーと、うーんとねぇ」
名前…か
「プリンセス!」
名前がプリンセス?
「うん!キラキラしててね、キレーだからー!」
「そうか、おい、リン!お前――」
リンって…プリンセスのリンですか?リン…ずいぶんと大雑把に省略されてほとんど原型をとどめてない名前に決まってしまったようだ。
何かを言われているようだったけれど私にはもう話す体力はおろか、話をまともに聞くことも出来なくなっていた。ボーッとする聞かなきゃいけないのに…
バタッ
私は床に倒れ込んだ
「――――!!」
「――――――!?」
何かが聞こえたきがした。
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