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第一王女フェリシアを〈災いの姫〉と宣告した後、フリードは王宮魔術師長を退いた。
長年の夢を叶えるために、王宮魔術師長という肩書が邪魔になったのだ。
「あなたが呪われた子をどういう意図で利用したいのかは分からないけれど、わたくしの前から消してくれるのなら協力しますわ」
美しく、残忍な笑みを浮かべて、クレア王妃が言った。フリードは、クレア王妃の〈災いの姫〉に対する憎悪を利用して、自分が〈災いの姫〉の側にいられるよう手配していた。
フェリシアは、赤子でも薔薇園一つ分以上の魔力を有している。リアトル様が存在した時は、それ以上の魔力がこの国を守っていたのだろう。フリードは薔薇の魔力だけでは満足できない。リアトル自身に会えなければ、この渇きは止められない。
「この国のために、そして、クレア王妃のために、私が責任を持って〈災いの姫〉のお側で監視しましょう」
この日、〈災いの姫〉を閉じ込めておく、フリードにとってはリアトルに会うための聖地、ヴェラント城の建設が終了した。そして、フリードは〈災いの姫〉に仕えるための使用人としてヴェラント城に同行する。
(これからリアトル様の器と共に過ごせる……)
リアトルの血族で、リアトルの魔力を持ち、リアトル復活のためだけに現れてくれたような存在――フェリシア王女。彼女の成長と術の進行を側で見守ることができる、そんな幸せな時間がフリードに訪れる。
「あら、珍しい。あなたでも笑うことがあるのね」
クレア王妃が大きな瞳をさらに見開いて、口を開いた。フリードは自分でも意識しないうちに微笑んでいたらしい。
「これも、すべてリアトル様の意志だと思うと……つい表情が緩んでしまいます」
いつ、リアトルに会うことができるだろう。
早く会いたい。
そして、愛して欲しい。
フリードの頭にはそれしかなかった。
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