<4>


「あなたが、王宮魔術師長候補のフリードですか」


 魔術師に興味を持っている、という王妃クレアが王宮魔術師の研究施設を訪ねてきた。

 その姿を見て、フリードの身体は喜びに震えた。王妃クレアに会えたからではない。その腹の中に強い薔薇の魔力が宿っていたからである。以前、クレアの姿を見た時には感じなかった。

 つまり、魔力がクレアの中に新たに宿ったのだ。


「クレア王妃、近々お祝いの席に王宮魔術師長として同席することと思います。どうかお見知りおきを」


 生まれてくる、フリードが諦めていた夢を叶えてくれる命が。

 神の領域だと言われた禁術を実現可能にしてくれる存在がもうじきに生まれてくる。


(すべての準備を整えなければ……)


 王宮魔術師長になり、すべての人間を従える。魔術師だけでなく、王族も、国民も、フリードの夢を叶えるための道具にする。

 フリードの心は固まった。

 そして半年後、第一王女フェリシア・シェルメゾーレが誕生した。

 その祝いの席で、フリードは王宮魔術師長として言葉を紡いだ。


『この子は、呪われている。いずれこの国を破滅に導くだろう』


 フリードのリアトルに近づくための計画が動き出した瞬間だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る