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 魔術師協会に入って数年、フリードは魔術師の中でも一目置かれる存在になっていた。それは、知識や技術だけでなく、薔薇の魔力を感じる素質を持っていたということが大きかった。

 魔術師協会で学ぶことはもう何もない。フリードは王宮魔術師団への配属を希望していた。リアトルの血を引く王族に近づきたかったのだ。

「俺のことを愛してくれるのは、リアトル様だけなのです」

 生まれてから今日まで、フリードはずっと一人だった。母には病で死なれ、父には捨てられた。フリードを育ててくれた教会にも、フリードの居場所はなかった。

 神父は世間の目ばかりを気にして騎士や魔術師に媚びを売り、拾った子どもたちに金を食われる前に早く里親に引き取らせようと必死だった。子ども達は神父の裏の顔を知らなかったが、いつまでも引き取り手のなかったフリードは知っていた。神父という立場を利用して、裏で私腹を肥やしていたのを。

 父に捨てられたあの時、フリードは気付いたのだ。人間の愚かさと欲深さに。

 そして、自分も同じ人間だということに絶望した。

 しかし、そんな人間を愛してくれるリアトルの存在に救われた。

 それでも、人間を好きになることはできなかった。リアトルの愛の恩恵を受けておきながらその愛を忘れ、自分の欲に溺れている醜い存在を好きになれるはずがない。愛せるはずがない。

 フリードは人間であることを捨てたかった。リアトルと同じ世界を生きたかった。

 そのためには、ただの人間では無理なのだとフリードは理解していた。

 だから、フリードは魔術師を目指したのだ。しかし、魔術を学んでも、神であるリアトルの世界に行く方法は見つからなかった。

 王宮魔術師団に行けば、その方法が見つかるかもしれない。

「リアトル様、俺は王宮魔術師になって、あなたの側にいきます」

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