第18話 鉄の決意
鉄は相変わらずおばあちゃんに会いに行った。
月・水・金とまるで決まっているかのように顔を出した。
それでも最近は一緒にご飯を食べる事は稀で、おばあちゃんの様子を伺ってすぐ帰った。
ユキは真壁と晩御飯を食べて帰ることが多く、仕事も忙しいのか帰宅が日々遅くなった。
時々、真壁も一緒に家まで来る。
その時は三人で食事をした。
おばあちゃんはユキが帰りが遅いときは一人ぼっちで、早いときは真壁も一緒なのでなかなかユキと落ち着いて会話ができる時間が取れなかった。
ユキは楽しそうだった。
よかったね、ユキ。
そう想ってあげるのが精一杯で、真壁が来ているときは邪魔にならないように気をつかった。
なんだか寂しかった。
鉄と会話する時間も減った。
きっと鉄さんは真壁のことを気にしているんだね……。
今となっては晩御飯を食べろ、とも言いづらい。
真壁とユキが楽しそうにしているのを鉄に見ろ、と言ってるのと同じことだ。
鉄がどんどん遠くなる気がして、おばあちゃんは寂しかった。
ある日、おばあちゃんは鉄に謝った。
「鉄さん、すまないねぇ……」
「藪から棒にどうしたってんだい、ばあちゃん。急に謝られると驚いちまうぜ、チェッ、チェッてなもんだよ」
「ユキを強引に鉄さんに薦めただろ? 傷つけてしまったね……。本当にすまないことしたと思っているんだよ……。許しておくれ」
「そんな。いいよ。俺っちさ、今まで女の人と一緒にデートなんかしたことなかっただろ? だから、楽しかったし、俺っちさ……。やっぱりユキさんの事好きだし」
「鉄さん、ユキに気持ちを伝えたかい? 一度でもいいから気持ちを伝えたかい?」
「バ、バカ言っちゃいけねぇよ! チェッ、チェッ、チェッ。俺っちみたいなヒョロヒョロのおじさんなんか相手にするユキさんじゃねぇやな。ばあちゃん、気持ちは嬉しいけどこれ以上は勘弁してくれよ」
「そうかい……」
二人は沈黙した。
おばあちゃんはこれ以上何も言えなかった。
「さぁ、そんな辛気臭い顔しねぇでくれよ! ばあちゃん! 何も俺っちが悪いことした訳じゃああるめぇし。な?」
「うん、そうだねぇ」
「そうそう、さぁ、元気だしねぇ! チェッ、チェッってなモンだぜ! あんまり辛気臭いのも良くねぇっていうぜ!」
鉄はあえて明るく振舞いながら言った。
「ばあちゃんさ」
「うん?」
「俺っちさ、もうここに来るの、やめていいかい?」
おばあちゃんはとうとう言われた、と思った。
同時に鉄の苦しさが伝わるようで言葉がでなかった。
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