第152話 急展開(1)
夏希が気分爽快になっていたころ。
「高宮さんが?」
斯波は上着を着ながら隣にやってきた。
「なんか熱があるみたい。 車で病院に連れて行くから。」
夏希は驚いて、
「あ、あたしも行きます、」
慌てて仕度をし始めた。
もう左足も着くことができないほど痛みが増していた。
「どーしよ、あたしのインフルエンザがうつっちゃったとかじゃないですよね、」
後部座席に高宮を介抱するように乗っていた夏希が言うと、
「うつるようなことするからだっ、」
斯波は怖い顔でルームミラーで彼女を睨んだ。
ま
そりゃ
あんな涙だかハナ水だかわかんないようなのが入り混じったモンがくっついたまま
・・キスしちゃったし。
夏希はゆうべのことをボーっと思い出して、また心臓がバクバクしてきた。
「あ~、折れてますね。 ココ、」
レントゲンを見た医師は、あっさりと言った。
「折れてる??」
高宮は寝不足と熱でぼーっとした頭を持ち上げた。
「くるぶしの上のとこ。 よく我慢したね。こんなの。」
と感心されるほどのわりと重症だった。
「熱もこの骨折からきてるみたいだから。 今、ギブスの用意します。」
「ほんっと・・」
夏希はもう顔を上げられなかった。
「す、すみません!!!」
「や・・」
高宮は松葉杖姿でただ苦笑いをするだけだった。
「いったいどんだけの力でドア閉めたんだ、」
斯波も呆れた。
「も・・びっくりしちゃって。 なんか夢中で、」
夏希は彼に対して申し訳なくて申し訳なくて平謝りだった。
「天誅かもしれないからさ、」
高宮は力なく笑った。
「と、言うか。 おれ大阪に帰れなくなってしまいました。今日は年末のあいさつ回りに行くことになっているのに、」
高宮は仕事を思い出した。
「そんなんで行けるわけないだろ。 志藤さんになんとか取り繕ってもらおう。 あの人ならすぐいいわけ思いつきそうだし、」
斯波はため息をついて携帯を取り出した。
「はあ? なに、もちょっとちゃんと説明しろや、」
志藤は機関銃のように説明する斯波の話の内容が理解できず、朝っぱらから起こされて機嫌が悪かった。
「ですから、高宮が加瀬に足を砕かれてですね・・」
「加瀬は大阪やろ?」
「だから! 今、説明したじゃないですか!」
話が進まなくてイライラする。
「え、なにその話、意味わかんない・・」
「そやろ? ったく、なんでおれがそんなことの尻拭いをせなあかんねん。」
出社した志藤は南にグチりながら大阪支社にした電話を切った。
「つまり、大阪から戻ってきた加瀬を追いかけて、また高宮がこっち来て。」
南は話を整理した。
「なんかしらんけど、もめて。 加瀬にドアを思いっきり閉められて足、骨折したんだって。 んで、高宮は大阪に帰れなくなって・・」
「あの二人、なにやってんの?」
南の疑問は最もだった。
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