第46話 告白(1)
「おれ…」
高宮は自分がどこに向かって話をしているのかわからなくなった。
「はい?」
夏希はその問いかけに彼の顔を覗き込んだ。
「…きみが、好きだ。」
言っている言葉はわかっても、それを理解するのにものすごくものすごく時間がかかった。
「はい??」
またも聞いてしまった。
「だから。 おれはきみが好きだ。」
高宮は今度は夏希の顔を見てそう言った。
夏希は自分が石膏のようにどんどん固まっていくのがわかった。
高宮をずっと見たまま
それが解けたかと思うと、手にしていたコーヒーをプラスティックのマドラーでぐるぐる、ぐるぐるかき混ぜ始めた。
紙コップの底が破けるのではないかと言うほどに。
「な・・なに??」
そのリアクションがわからない。
「きみと会えば会うほど。 話せば話すほど。もうどんどん惹かれていって。 ・・好きだなあって。」
言葉が
彼の口からこぼれた瞬間からどんどん蒸発していくようだった。
「すきって…」
ようやく話をすることができた。
「うん、好きだ。」
高宮は真剣な顔でそう言った。
夏希は大きな目をさらに大きくして、そのマドラーにぐっと力を入れてしまった。
「あっ!!」
紙コップの底が破れてコーヒーが、どーっと漏れてしまった。
「あ~あ~、もう、何やって・・」
高宮はそこにあった雑巾で床を慌てて拭いた。
「すっ、すみません、すみません!」
夏希もハンカチで服についたコーヒーを拭いた。
「シミになるよ、ちゃんとたたいて。」
「なんか…もう、キャパオーバーになっちゃって・・」
「おれの気持ちを言っただけ。 別に今までどおり一緒に食事に行ったり、話をしたり。 それでいいし。」
高宮は手を洗って、彼女ににっこり笑いかけてそのまま出て行ってしまった。
なに
アレ。
え?
なんで???
急に…。
そのまま幽霊のように夏希は事業部に戻ってきた。
「あ、どこ行ってたんだよ~。 悪い、これ3部ずつコピーしてくれる?」
八神が書類を手渡した。
ぼーっとして受け取る彼女に、
「おい! 聞いてる?」
目を覚ますように言うと、
「え?? あっ! っとー・・シュレッダーですか??」
トンチンカンな返答をしてしまう。
「シュレッダーかけんなよ…。」
八神ははあっとため息をついた。
「あ、コピーですか? え? 10部ずつ?」
「話をちゃんと聞けよ! もー!」
「すみません・・」
さすがにシュンとしてしまった。
『きみが好きだ』
ひょっとして
あたし…人生初めて
コクられた??
だんだんとさっきの場面が頭の中ではっきりとピントが合っていくのがわかった。
ど
どーしよう!!
嬉しいとか
そういうんじゃなくて。
・・もう
どうしよう、としか言いようがなくて。
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