1st_Curiosity killed the cat. 02

 やっと、たどりついた。

 ティナが既に死にそうになってるけど、一応たどり着いた。


「この建物だね」

「うん、これが…」

 六区の中心部、都市のど真ん中。その建物の名は、『計都生物学研究所』。

 今では既に使われていない。去年で全ての研究が終わっただかなんだか。


 研究が終わったなら、すぐに取り壊してしまえばいいのに。


「ほら、早く中に入ろうぜ」

「待って、ティナが…」

「…ぜぇー、ぜぇー…」

「もう、ヘイジが飛ばすからー…」


 結局、ティナが動けるようになるまで3分は掛かった。

「…ふぅ。…じゃ、行こう」

「よっしゃ、探検だー!」

 僕らはこの廃墟と言うには新しすぎるこの建物の中へ。

 中は外見に沿うくらい綺麗で、手入れがされているのでは、と思うくらいだった。

「今でも研究してるのかな?」

「さあ、僕にはわかんないけど…」


 その時だった。

 突然、ドアが閉まる。誰もそちらの近くにいなかったので、もちろん驚いた。

「…いま、ドアが勝手に…!」

「どういうこと…?」

 なおも異変は続く。

 次は、誰もいないはずのこの研究所内の至るところから、サイレン音が流れ出す。


 ビィーっ!ビィーっ!

「なんだよこのサイレン!」

「どうなってるんだ、ここは無人のはずじゃ…」


 そして、最後の仕掛け。

 突然、白い霧みたいなものが立ち込める。


「ど、毒ガス…?」

「いや、これ…は…」

 強烈な眠気が襲う。

 あ、これ催眠ガスだ、と理解した時には、自分の体は床に崩れ落ちて。


 そして、意識は黒に染まる。


 ―――


 ――者…態、……に………て………ま……

 …わん…続…ろ…

 了……まし………ット……プ、73……


 人の声が聞こえる。そもそも、僕は…確か…

 …そうだ、研究所。あそこで、ガスを吸って…


 目が覚めると、自分は透明な筒の中にいた。

 …! ここは…

 驚くべきことに、筒の中は何かの液体がきっちり詰まっていて、自分はそこで息が出来ているのだ。

 この外は…暗くて見にくいが、何か白い人影らしきものが4,5人くらいいる気がする。


「被験者1人が目を覚ましました」

「じきに三人も起きるだろう、そしたら始めよう」


 被験者…って、多分自分のことだな、というかこんな状況でなんで落ち着いてんだろう、僕は。

 ふと自分の身体を見ると…


 良かった、服は着てあるようだ。なぜかここに来るまで着ていた学生服じゃないけど。

 体にはチューブとかが刺されているわけでもなく、何不自由ない状態だ。


 横を見ると、左側は暗かったが、右側は同じような筒があるようだ。きっと、誰かが入ってるんだろうな…


「四人全員起きました」

「よし、君たち、聞こえているかな」

 上側から声がする。

「一番左の君、騒がない。右から二番目の子も。あと、左から二番目の子、落ち着いて」

 落ち着ける訳ないだろ。

「そして、一番右、落ち着きすぎ。ともかく、運悪くここに来た君たちに、話がある」

 どんな話だ…。


「ある実験の被験者になってもらうよ、どんな実験かは… 成功すれば分かるだろう」

 待て、失敗したらどうなる。

「失敗は万が一にもあり得ない、安心してくれ。まあ、多少の痛みと体の変化と、明日からまともに生きることできない体にはなってもらうが…な」

 どういうことだ、どうなってんだ!

「システム、92%完了」

「そうだ、不幸ついでに君たちに教えよう。君たちはきっと、訪れたら人でなくなる施設のうわさで来たのだろうが… それは半分嘘で、半分本当だ。」

 半分嘘、半分本当…?

「そもそも、その嘘はこの研究所が流した噂だ。そして、その目的は、最初に来た人間四人を物理的に人から姿を変えさせる、という実験だ」

 何を言っているかさっぱり分からない。

「ただ、その実験は、今後この計画都市に起きる重大なセクションの一つなんだ、分かってくれ。被験者になった君たちには、まさしく魔法のようなことが起きるだろう」

 研究所なのに、そんなこと言っていいのか…

 いや、そもそもなんで僕がこんな目に。


「システム、100%です」

「では、始めるぞ」

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