第28話 夜景の中愛を語り合う二人

風呂場から上がり体を隅から隅まで拭き銭湯から出る。


「あ、あきら。あなたも今あがったの?」


「さやか、ああ、今俺は上がったところだ、よっこいしょ」


「で、なんで肩かけてくるのよ?」


「いや、なんとなくだ」


いつものノリでさやにちょっかいをかけてみる。女の子の柔らかい体だ。


「それでさ、あきら。今晩私と一緒に出ない?」


「え、どこに?」


「いいからいいから」


さやは俺の手を引っ張って外に出る。

着いた先は大きな木下だ。きれいな夜景だ。ここから街の大部分を見ることができる。


「で、話って何さ?」


「私ね、あきらのこと、何ていうかな…好きになったみたい…」


「何を今更、俺たち恋人だろ。そんなの当たり前じゃないかな」


「そうじゃなくて、なんか側にいたいって強く思うの…」


「そ、そうか?まあ、そういうものかもな」


「あきらはどうなの?私のこと好き?」


言葉に詰まる。俺はさやのことを…今は何とも言えないんだ。

俺さ、いつも天然だからだろうか。いや、俺もさやの側にいると楽しい。

だけど…


「俺分からないんだ…。今、さやに抱いてる気持ちがどんなものなのか…」


「そう、なの」


「でも、さやといると楽しいんだ。これだけは本当だぜ」


「帰ろう…」


「え?」


「帰ろってさ。あなたのことは分かったし、少しスッキリしたわ!じゃあね」



「…目を覚まして!お願い、目を覚まして!」

頭痛と声。また聞こえる。前よりも鮮明に。一体俺はどうしてしまったのだろうか

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