第21話 記憶

「まさか、あなたと一緒になるなんてね」


さやと夜の校舎を回ることになった相手は俺だ。なんか若干引かれている気がする。


「まあ、俺たち夫婦で回ることになったんだ、せっかくだから楽しもうぜ」


「何が夫婦よ、からかうのもいい加減にしてよね」


「へいへい」


ちょっと言い過ぎたか。俺たちは黙って校舎の中を探索する。人魂だったりゾンビだったり色々出てきたが、俺は動揺したり…しまくった。思いっきりさやに抱きついて、そして殴られた。


「あなたなんのつもりよ!何隙を見て抱きつこうとしているのよ!そういうのは普通逆でしょ!それなのになんで私が抱きつかれなければならないのよ。もう殺していい!?もうあなたも亡霊の一部になればいいのよ!」


「マジ、スンマセン」


「まったくもう…」


俺たちは一時休憩というわけで廊下の隅で座った。


「あなた好きな人はいないの」


好きな相手…くぅ…」


急に頭痛がしてその場で倒れこむ。頭がいたい。一体何なんだこの感覚は…。脳内の記憶メモリーが無理やり俺の記憶を呼び覚ませようとしてる。


何の記憶だ。これは大きな木下で誰かと俺が弁当を一緒に食べてるビジョン。


「ねぇちょっとあきら大丈夫!?」


「あ、ああ心配ねぇよ、初恋ねぇ…そんなの忘れた」


「え!?忘れちゃったの!?大切な記憶なのに?」


「今はさやがいるだろ、それで充分さ」


「そ、そうね」


さやは頬を赤くする。

肝試しのコースを出てジンとりかに合流する。

若干りかとジンの距離が狭まったのは気のせいだろうか。


「これで楽しい肝試しも終わりだな」


「そうだな」


だが一体さっきのは何の記憶だったのだろうか。俺にも知らないことがまだまだあるのだろうか。



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