第68話

 ま、遠くから眺めてるだけで分かるワケも無いし、チョット手に取って詳しく見てみるか?


 ってなワケで、二フロア分の共を干渉魔法の標的に設定しつつ、僕専用昇降路を囲ってる連中のポケットの中身も照準。

 有り余ってる魔力を干渉魔法で共の肉体へ叩き付けながら、同時に空間魔法によるアポートを実行すると、眼前の虚空に現れますは人数分の木片が六枚ナリ。

 ソヤツらが転移直後で自由落下を忘れてる内に片手で掴み取り、決闘者の如く扇状に開いては何やら焼き印されてるらしい謎図形と呪文テキスト? を確認。


「――ん~、円……じゃなくて、六、いや八角形? に四角三角がベタベタと……オーソドックスな魔法陣か。その周りのは、漢字、じゃあないな。ハングル? 梵字? 少なくともアルファベットではないとなると、つくづく和製ファンタジーなのね……」


 はてさて、コイツに一体どんなカラクリがあるのやら……取り敢えず、何かしらの魔法的な品ではあると思うので、身体中に巡らせるのと同じ感覚で魔力を流してみると――


「ありゃ、割れちった……いや、結構抑えたつもりだったんだけどなぁ」


 うん、そもそもが貧弱魔力のニンゲン様仕様だったから、その辺ちゃんと考えてたつもりだったのに、それでもこの有様って……


 いや、何でもかんでも最初っから上手くできちゃう兄さんと違って、こういう初めての試みってヤツを大抵失敗させちゃう不器用さは前々から自覚していたつもりだったんだけどね。


 それでも、最近は――特に魔界アッチではぶっつけ本番も出たとこ勝負も結構勝率高かったんだけどね。

 多分、急に覚醒したCHOKKANセンセイの御蔭だろうけど。


 でも、戻ってきたらこのザマとか、主観的に魔界アッチで結構長い時間過ごしてきたのに成長が感じられなさ過ぎて若干凹んでしまいませう……


 って、今はそんな下らん感傷に浸ってる場合じゃないね。

 そもそも、木片の効果なんてどうでも良いし、ゴミの片付けがまだまだ残ってるしね。

 今はすべきことを成す時ぞ、ってね。


 そんなワケで活動再開!


 エンカウント面倒事は避けたいので、僕の些末な自信と一緒に砕け散った木屑を捨てて、エコロとソナーで天井越しに次の階を精査して転移先に向きそうなスペースを見付けては空間魔法を発動。

 でもって、門を通って上階に到着し次第、もっかいエコロとソナーでフロア全体を隅々までチェックして共を捕捉。

 そっからの干渉魔法ブッパで一網打尽のリアルに粉骨砕身させちゃって――を繰り返すこと十五

 さっきの十分も含めれば締めて二五分か。


 コレで遂に地上へ戻って来れたのか、普通の病院みたいなデザインの廊下には窓から陽射しが差し込んでて眩しいゼ。


 っと、いやいや、待て待て黒宮辰巳。

 別に地上階に出たからって標本のストックが尽きたとは限らないんだから、引き続き片付け作業してかないと!


 ちなみに、この作業中にあった妨害はさっきのミリタリーズだけ。

 そもそも、転移先には人気の無い場所だけを選んでるので、一般職員にしろ武装集団にしろまず絡まれる心配がなくて楽なのでした。


 まあ、騒ぎが広がってきてるのか、施設全体がなんだか騒がしく感じるけどネ。


「――んじゃま、もう一頑張り行きますか~」


 なんて、周囲の騒ぎは努めて無視しつつエコロとソナーを展開――したけど、反応無し?


 代わりに、共の保管場所と窓の無い部屋軟禁部屋と最下層の大規模実験場コロシアムなんかが目立つような、常駐してる人が少なそうな地下と違って、結構な数の人の気配がする。


 まあ、関連の研究をやってる地下に出入りできる人間なんて限られてるだろうし、その地下を外部から守るんなら地上の守りを固めれば済む話だから、なんにもおかしくは無いけどさ。


 ってかそれよりも、思ったよりも地上階が少ない?

 コレ多分、十階も無くない?


 いやまあ、さっきのデブ部屋では地下のに気を取られてソナーを下方向にばっか広げてたから、その所為で建物の外側への知覚が疎かだったとは思うケド。


 それに元々地下から上がってきてた所為で『結構登ったな~』って感覚はあっても、その登った内のドコからドコまでが地下で地上だったのかなんて把握できなかったし。


 まあ、だからなんだって話だけど、でも地下より地上階の方が少ないのに人の気配は多いって、ぼくのかんがえた最強のローラー作戦的には要注意ポイントだね。


 なにせ、『討ち洩らしが無いよう、一階一階踏み込んで探知する』って作戦の都合上、この施設の全階層で多少なりとも立ち止まらないといけないワケで、そうなるとその立ち止まってる隙に相手さん側に捕捉されちゃうカモなんだよね。


 今までと追ってきた地下階層は人が疎らだったから天井ブチ破るなんてムチャクチャやっても何とかなったけど、こっからは多少気を使ってあげないと怪我人が出ちゃうかもしれない。


 となれば、ココからもまたさっきまでと同じく空間魔法での移動かな。


 それなら無駄な騒音で居場所を喧伝するようなコトにはならないし、さっき起きてからずっと魔力有り余ってるし。


 難点と言えば、干渉魔法ほど使い慣れてるワケじゃないからミスる可能性がある事と使うたびに頭痛が酷くなるコトくらいだけど、失敗率低減なんて反復練習以外に方法無いし痛みなんて今更だから、まあどっちも大したコト無いかな?

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