第69話
そんなワケで、さっきまでと同じく探知と空間魔法と干渉魔法――は使う相手が見当たらないからパスだけど、とにかく山無し谷無しな単純作業を繰り返すコト八階分。
結局、地上階に
辿り着いたのは、どんなヘリでも簡単に収容できそうなだだっ広い屋上のヘリポート。
そこから見渡せるのは、閑静な雑木林とその奥に連なる緑の山々。
その反対側は蛇のようにクネクネと伸びる道路に、それが通じてる見覚えのある都市風景。
天頂から見下ろしてくる太陽の位置的に考えて、時刻はお昼過ぎくらいなのかな。
う~ん、あの街の中心に立ってる馬鹿デカいビルが金見市駅前のランドマーク『金見タワー』だとすると、目的地は目と鼻の先ってワケだけど……って、近っ!?
地下二五階から地上八階分にも及ぶ巨大な建物が生まれ育った街のすぐ傍にあったって言うのに、今まで気付かなかったどころか話にすら聞かなかったなんて……一体どんなカラクリが……?
いやまあ、考えてみた所で答えなんて出ないからどうでも良いんだけど、それよりも問題なのは今のこの時間帯の方だよね。
流石に
そもそものハナシ、父さんと母さんが死んだ事故はなんで起きた?
兄さんと僕が魔界なんてクソみたいなトコに飛ばされたのは?
僕が
………………――そうだよ。
ココの特理とか言う連中が
なら、僕がコイツらの流儀に付き合ってやる必要なんか無いし、そもそも、これからやろうとしてる事を考えれば、変身体の化物マスクで素顔が隠せてるのはワリと都合が良いしね。
それに変身体の下は手術着裸足なんて中々に不審者度の高そうな格好だから、それを隠せるのもイイネ。
いや、変身体も全裸リザードマン(羽付き)ってカンジだから、怪しさバツグンだけど……
ま、まあ、コッチは
返り血とか肉片とか骨片とかも、今までの移動中に全部綺麗に振り落とせてるみたいだし……ネ?
ア、アヤシクナイヨ……?
――ゴフンゴフン、と、取り敢えず、今は格好の犯罪性についての議論は置いとこうか。
まずは、何をするにしてもこの施設を出てからの話なんだから、こんな玄関口でむ~む~唸ってたって話進まないしね。
そんじゃ、ココの連中に邪魔される前にサッサと御暇しましょうか。
今まで狭い室内を進む為に折りたたんでた翼をバサッと開いてから、しゃがみジャンプ、ポゥン!!
そうやって、ヘリポートの○にHの白線が丸ごと視界に納められるくらいの高度を確保してやりまして、更にそこからバサバサと羽搏いて急上昇、ビュ――――ン!!
客観的には十年以上前、主観的にはつい昨日の時のように、大抵の建物に引っ掛からないような高さまで昇り、正面に見据えた地方都市へと向けて翼を扇ぐ。
一回、二回、と伸び伸びと平泳ぎでもするように失速し始めた瞬間に両翼で空気を押し出して進み、田んぼやら畑やらを尻目に都市外周部へ到着。
うん、やっぱ近過ぎるよね?
まだ二回しか羽搏いてないんだけど?
「なんでこんな近くなのに、
なんだかんだでやっぱり納得できずに空中で急停止しながら振り返ると、『考えたって分かるか~』と匙を投げた疑問の答えが見えてきた。
いや、正確には
そう、振り返った視界の奥には、ついさっき出てきたハズの巨大な研究施設なんて影も形も無かったんだよ。
代わりに見えたのは、緑の斜面とそれを縫うように張り巡らされて街と隣県を繋ぐ幹線道路。
うん、地上八階建てのビル(いかがわしい研究室入り)なんてドコにも見当たらない。
ついさっき確かに出てきたばっかりだって言うのにね。
でもまあ、この手の手品は
ホラ、確か――なんだっけ?
ナントカって名乗ったデブ鬼が炎だか熱だかを魔法で生み出すだか操るだかしてきた事があったでしょ。
基本はアレと同じだね。
今回も炎系とは限らないと思うケド、とにかく何かしらの魔法で建物とかソコに通じる道路とかを覆い隠してるってワケだ。
よく言う結界的なヤツだろうね。
恐らくは、光や振動に干渉できるような属性――風や水辺りの魔法かな?
出てくる時に範囲系の炎魔法が展開されてるあのカラッとしたカンジもしなかったし、ココから見
……な~んて、訳知り顔でつらつらと並べてはみたものの、こんなのは僕の貧弱脳ミソで組み立てただけの妄想染みた仮定のハナシでしかないから、実際のトコはわっかんないけどネ。
それこそ、本気で確かめようと思ったら戻って知ってそうな人に聞くぐらいしかないだろうケド、あのメタボ汚いオッサンの態度から察するにホントのコト話してくれるとも思えないから、実質確かめようなんて無いね。
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