第57話
いや待て、本当にそうなのか……?
通信越しに音が聞こえた以上、ヤツがこの施設に居るのは間違いないだろうけど……でも、フィジカル無振り臭いクソジジイが逃げ場の無い地下に潜るか?
あーゆー自分が世界の中心なカンジのジジイは、あの
ん~……じゃあ、上もやってみるか!
てなワケで、思い立ったが吉日とばかりにグーを作って魔力を集中。
そんでもって、ジャンプ!! ド~ンッ!!
『い、一体何を――ッ!? な、何をしている小僧ッ!?』
天井と衝突してからスタッと着地して視線を上げると、ストンプの時と同じように拳骨のくり貫きが遥か彼方まで――お、今度はさっきよりも早く音が聞こえてきたな。0,5秒くらい?
ふむ……って事は、ヤツが居るのはやっぱり上だと見ていいかな?
いや~、デブが延々通信続けてくれるマヌケで助かった。
あと、直接触れてないとは言え、それなりに振動が伝わってるハズなのに壊れなかった頑丈な通信機器達にも感謝感謝。
んじゃまあ、さっさと向かいますか!
ってコトで、もう一生治まんないんじゃないかってくらいに延々と続く頭痛を無視して、全身を魔力で強化。
そんでもってもう一回、今度はさっきより気合入れてジャーンプ!!
シュワッ、ダァッ!!!!!!
『――――ッッッ!??!!? や、止め――のぉわァ!??!!!」
さっき開けた拳骨穴を更に拡げるようにシュワッチして何枚も天井を突き破って昇ると、途中で通信と同じ肉声が聞こえたので、クルッと回転してデブが居る部屋の
勿論、穴が開いて脆くなってる天井を突き破らないようにキッチリ撓めた両脚で運動エネルギーを殺し切りつつ、ついでに落ちないように魔力強化した両手の指を天井に突き刺しつつね。
それから改めてグルッとその部屋を見回してみると、
「なっ!? ば、莫迦なッ!! 貴様ッ、どうやって此処までッ!?」
予想通り、力士やプロレスラーとは似ても似つかない純然な脂肪の塊だけで肥大化した身体の、どう見てもどう聞いてもどう嗅いでもフィジカル無振り過ぎなメタボリックジジイが居た。
しかも、銃やらナイフのような武器の類も、何とかさんみたく用途不明な紙束やら板切れやらすらも持ってないとか、寝惚け過ぎて欠伸が出るね。
ただ一つ脅威なのは、そのメタボリックボディーから放たれる強烈な臭いか……いやはや、汗と加齢臭が混ざってるらしい殺人的な臭さだ。死ねばいいのに。
そんでソイツが、部屋とか廊下とか幾つもの監視映像を同時表示してるモニターを六つも並べたデカゴツいデスクから腰浮かせてコッチを見上げつつ、ブヒュブヒュ息荒げながらベラベラビチャビチャと唾飛ばしながら怒鳴り散らしてくる。うっへぇ、バッチィ~。
でも、丁度真上に陣取ってたのを一発で見付けられた事は中々ラッキーでした。イエイ。
と、そのまま罵詈雑言吐き続けるのかと思ってたオッサンは、不意にモニター脇のマイクを引っ掴んで、
「ク、クソッ『オイッ!! 特監が脱走しているぞッ!! 至急――ガヘェッ!?」
「いやうるさいな。静かにしろよもう」
悪態一発吐き捨てた後に人を呼ぼうとしたので、天井蹴って自由落下気味に踏み倒して妨害する。これからインタビュー――じゃなくて、折角だから『問診』って言った方が上手いかな?――しようってのに邪魔が入るのは戴けないからね。
すると、まさに潰れたカエルみたいな声を上げながら仰向けの大の字になったので、片足は床に避けといてやりつつ、残る右足で無駄口利かないよう首下の鎖骨辺りを踏み付けてやった。
「さて、それじゃあそろそろ質問するけど、ちゃんと答えてくれる? できれば、嘘を吐いたりしないでくれると嬉しいな。いや、『できれば』じゃなくて『絶対に』かな。他の人達にまで聞き込みするの面倒だし」
と、起きてからずっとず~っと苛んでくる頭痛は無視して、身体を押さえ付ける足を掴んでなんとか抵抗しようとしてるデブジジイへ穏やか且つにこやかに微笑みながらお願いしてみる。
すると、大人しく答える気になったのか、
「グッ、な、何が……望みだ……?」
首元を押さえ付けられてるからか、妙に掠れた声で此方の意図を問い質してきた。
うんうん、やっぱり会話は
でも、今言ったばっかの事を繰り返させるのは良くないな~、グリグリ♪
「――ギブゥッ!?」
「だから、『質問する』って言ったでしょうが……う~ん、でもまあ、初っ端からなんでもかんでも喋ってくれそうには見えないし、どうしようか……? こんな時、兄さんなら――」
そう――こんな時兄さんなら『景虎流会話術その六、他人(ヒト)から秘密を聞き出す時は、まず答え易い質問を繰り返して口を緩くさせるべし』なんて嘯いてアッサリと口を割らせるのかな……
詳しい方法はサッパリだけど、僕にもできるかな……?
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