第56話
ケフン……さて、そんなペーパー黒宮が飛び込んだ先はやっぱり目が痛くなる真っ白空間だった。眩しっ。
一応、突入の騒音を使って音響(エコー)チェックしたので、ココがさっきまで居たのと同じ真っ直ぐ一本道ってのは分かったけど……
やっぱ、相変わらず人の気配はしな――ん? 『ゴポッ』?
なんか今、妙な物音がしたような……?
「こんな場所で水音って……地底湖か何か? いや、そんなの
う~む……
例えば、もし、万一、ホントに地底湖的なものがあって、それが分厚い何かでできた壁越しに水音が聞こえちゃうような近距離にまで迫っているとしたら、これヘタすると僕の力尽く脱出の所為で水没の危機があるよね? どうしよ……
ん~、でもな~。
なんかその割にはやけに音源近かったし、もしかしたらなんかの薬品瓶か何かが立てた音だったり……?
いやでも、それにしては体積大きめな低音だったような気が……
「……まあ、『下手の考え休むに似たり』って言うし。うん、取り敢えず物音の正体を確かめながらデブ(仮)も探すとしようか」
なんて、妙に気になった水音の正体解明を
まずはその水音がしたと思しき部屋の前へ。
まあ、例の如く一見フツーの壁状態で、ドアノブやら取っ手どころかパスコード入力用の電子パネルとかまで見当たらないから、相変わらずどうやって入ればいいのかさっぱり一切ワケワカメだけど。
「……見付けるだけで一苦労なステルスドアとか不便じゃないの? そりゃあ、僕はエコってるから問題無いけど、ココの人達は普段どうしてんの?」
なんて人外チックな感知技能をテキトー略語にしつつ、その声で改めて知覚。
うん、位置的に見ても、やっぱりさっきの水音はこの奥から聞こえてたっぽいね。
しかも、なんかうっすらと見えるスライドドアの淵から強めのケミカル臭も感じる。
うぬぬ、もしかしてやっぱりさっきの薬瓶説は正解だったのかも……
そんな事を思いながら、次は最初に部屋を出た時と同じようにガリゴリと解錠。
すると、奥には――
「うげっ!?!!!! くっさッ!!!!!! なんじゃこりゃ!?!!!!」
今まで何とかさんやら蜂蜜取りのABCさん達が漂わせていたケミカル臭の源泉が並べられていた。
……なんて言うと薬品庫と勘違いされそうだから明言すると、
ズラッと並べられた人間大のSFチックカプセルが数十個、それらから何重何百もの配管やらコードやらが根っこのように何本も伸びている有様に、何故かマングローブと腹パンパンの蜜アリを連想した。
で、その蜜アリマングローブの中は異臭の源泉っぽい謎液体で満たされてる。
ちなみに、色は無色です。
ソコ、地味とか言わない。
アニメとか映画とかと違って、ワザワザ色付けて演出する手間を掛ける必要なんか無いだろうからね、しょうがないネ。
んで、その無色な液体の中には色とりどりでデコボコと歪な腕やら脚やら頭やら、五体満足のままのゴブリン的なのとかナ○シカ的な巨大蟲とか、あとはスイカサイズの目玉なんて物まで浮かんでいる。
見るからに
連中の身体は魔力で織られた仮想物質だから、死ねば時間経過で魔力に戻って消えて無くなるのでは?
もしかして、あの液体がそれを防いでるのかな?
或いは、保存専用の魔法でも使ってるのか?
それとも、
まあ何にせよ――
「――ったく、悪趣味な。アレか、学術的価値がどうのとかってヤツか? こんなマッド展開だと
『おやおや。何処へ行ってしまったのかと思えば……いけないなあ。其処は関係者以外立ち入り禁止なんだがねえ』
なんて独り言ちってた矢先、天井に設置してあるらしいスピーカーから白々し過ぎてまともに聞く気すら失せるような声が響いた。
『そもそも、君は感染症の疑いがあるのだからそう気軽に出歩いてはいけないよ。君、もう今年で中学二年生だって話じゃあないか。ならば、細菌感染やパンデミックなんて言葉を聞いた事ぐらいはあるだろう? 少しは配慮と言うものを――』
あ~、うぜえ。
ただでさえ耳障りだってのに、グダグダグダグダと興味ねえ事ばっかり垂れ流しやがって。
テメエはコッチの疑問に答えだけ返してりゃイイんだ――って、そうだ! 良い事思い付いた!
と、思い付きのままに右足へ魔力を集中。
頭痛が更に酷くなるけど、構わずそのまま思いっ切りストンピング、ドーンッ!!!!!!
『……大体、君には――おわッ!? な、何事だ!??!!?』
硬い表皮を持つ
その破砕音がデブ(()メンドイからもう無しで良い?)の通信越しにも聞こえてくれば、それを頼りにヤツの居場所を特定できるかな~、って思ったんだけど……なんか、思ったようには聞こえてこないな。
通信越しに音が聞こえるまでに一秒前後ぐらい間があったから、恐らくデブはココから数百メートルくらいの範囲にはいるっぽいけど……
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