第55話
「そんじゃまあ、行くとしようか」
裸足のままペタペタとスライドドアの前に立ち、十分に魔力で強化した手をドアに掛ける。
すると、なんの凹凸も無いドアの壁面に指先がゴリガリと突き刺さったので、そのまま簡単に引っ張り開けられた。
そんで飛び込んで来るのは白白白……って、この
それに、用があるのは病的真っ白な廊下じゃなくて、その端のエレベーターだからね。
ってなワケで、邪魔が入る前にさっさとだっしゅナノデス。
スタタンタンッと駆け抜けた僕は、主観時間三秒ほどで
な~んて、病室と同じ要領でスライドさせた扉の奥にあったのは、狭い箱みたいな個室じゃなくて、ゴウンゴウンと機械音が喧しいマシーンチックな縦穴だった。
待つのがダルかったからつい出来心でやっちゃったけど、普段は個室に塞がれてる部分が露わになった所為かイヤに埃っぽいし、扉の内壁辺りにある赤色ランプも要所を照らすだけで全体的に薄暗い。
フツーの中学生だった時ならとても登る気にはならなかっただろうけど、まあ今のイカレた身体なら問題無いっしょ。
と言うわけで扉の奥に踏み込むと、ゴウンゴウンの音源を頭上の遥か彼方に発見。
ズルズルとぶっといワイヤーに滑車で釣り上げられる箱がソコには在った。
「なるほど、僕には使わせないって事か」
きっと、僕が動き出したのを見て、あのデブ(仮)は上がって来れないよう意地悪しようとしてるんだろう。
まあ、金属だかセラミックだかに指突き刺した挙句、そのまま力尽くで扉を開くようなヤツには近付いて欲しくないよね。
でも、それなら僕を観察する前に最初っから上げちゃっとけば良かっただろうに、なんで今更そんな事するのか。
しかも、なんかあの箱の中、人居るっぽいし。
う~ん……もしかして、僕が思ってる以上に倒れてた時間は短かったのかも……?
そんな事よりアレだ、折角地上に続いてるっぽい道が見付かったんだから、サッサと登っちゃおう。
では早速魔力をネリネリ、足に集中――よ~い、ドン!!
なんて、魔力強化で思いっきり跳んではみたものの、魔力を使うたびに酷くなる頭痛の所為で少し制御をミスった。
結果――
ヒュ――ドゴシャッ!!
昇ってる最中のエレベータに追い付いて、そのまま床板に激突するハメになっちゃった。
いや、寧ろ突き刺さって――あ~、突き破ったってカンジかな。
犬○家とかディ○ダとかみたいに胴体辺りで中途半端に止まらず、全身丸っとエレベーター内にあるワケだし。
『『「――――っ!?!!!!」』』
と、唐突に部屋の中心に現れた僕に驚いたのか、エレベーターって単語から連想される狭苦しさとは無縁な広さの箱内に鋭く息を呑む音が響いた。
それも複数。
その声に釣られて『ん~~~?』と辺りを見回すと、そこには白い防護服達と何とかさんが――ってか、寄ってたかってコッチ見んな鬱陶しい。
『だ、脱走だ!! 確保しろ!!』
『む、無茶言うな!! 専用装備も無くできるワケが無い!!』
『とにかく連絡だ!! 所長に報告を!!』
「皆さん落ち着いて!! これ以上、彼を刺激しては――」
……なんか、蜂の巣突いたみたいな騒ぎになっちゃった。
ホントに蜂の巣突いてそうな格好の連中が騒ぐ側とはこれ如何に。
にしても、こうして聞き比べてみるとやっぱり何とかさんの――いや、女の人の甲高い声って妙に耳に響いて鬱陶しいな。
コレが所謂『耳障り』ってヤツかね。
だけど困った。
こんなふうにグダグダキーキー騒がれてたら、コッチの質問になんて絶対答えてくれなさそうだ。
ちょうど良いから、あのデブ(仮)の正確な居場所について聞きたかったのに……
「…………ハァ、まあいいや。適当に探してみよ」
なんて、早々に視線を切ってエレベータの出入口へと逃げ――じゃない、向かう。
べ、別に見ず知らずの他人達に注目され続けるのが怖――嫌だったとかじゃないんだからねっ、勘違いしないでよねっ。
ゲフン……と、とにかくそんなカンジでエレベーターの自動ドアに手を掛けたワケだけれども、突入の衝撃で自動ブレーキが掛かったのか、ドアの奥に現れた建物側のドアは大きく上にズレた位置にあった。
これじゃあドアを開けるだけでも一苦労だし、もし何かの弾みでエレベーターが動き出したら、セルフ断頭台(ギロチン)チックなすんばらしくデンジャラスな目に遭いそうだ。
ま、生身とは言え魔力強化中のトンデモぼでぇーの前には『無駄無駄無駄ァ』だけどね☆
――ってなワケで突入、オラァ!!
ノリとテンションに任せてタックルを敢行した僕の身体は、サブカルチックな
いや~、
え? 『お前、元から平面な世界の住人だろ』だって?
失敬な、人を薄っぺらな人間みたいにっ。その通りだけど!
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