第54話



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 ――なんだか、素晴らしくクソ長ったらしい回想ユメを見ていた気がする。

 具体的に言うと――そう、文字数にして十万字を超えるくらいの。

 ってか、あの終わり方で話が始まったんならいっそ転生しちまえよ。

 そうやってニーズを無視するから、いつまでもガラガラなんだぜい?


 覚醒したばかりの意識へ真っ先に浮かんだのは、そんなメタメタな所感だった。


 次いで感じたのは、ケミカルなあの真っ白い部屋の臭いと幾つもの機械が放つ乱雑な駆動音。

 それから、柔らかく身体を包む温かなベッドの感触……それに、ジクジクと膿んで熱を持つ傷口のように煩わしく続く頭痛――


 寝起きとしては赤点ギリギリな感覚情報ばかり――触覚の分だけは加点――で、もう既に目を開けたくなかったけれど、まあ回想ユメの内容的にはそうも言ってられないか。


 そんなワケで仕方なく開いた目に飛び込んできたのは、予想通りの白、白、白白白シロ……


「――うっ……ハァ、誰か壁紙だけでも張り替えてくれないものか……いや、もしかしたらコレ素材的に元々こんな色ってのもワンチャン…………ないか」


 眩みそうになって反射的に閉じた瞼を押さえながら身体を起こし、もう一度改めて覚悟を決めてから瞼を押し上げる。


 あ~、クラクラする……けど取り敢えず、ココは感じていた通りな場所だった。

 つまりは、あの病的なまでに白過ぎる上に窓一つ無い監獄みたいな病室だ。


 どうやら、抜け出した廊下で意識を失った僕はまた同じ部屋に戻されたらしい。さっき傷付けた壁もまんま残ってるし。


 でも、部屋にしろ服や僕自身にしろ血塗れ状態のまま放置するつもりは無いらしく、真っ赤になってた物は全部綺麗に替えられたり拭き取られたりしていた。


「まあ、場所なんてどうでもいいか……そんな事より――」


 そう、そんな事より他に確かめないといけない事がある。


 まずは、今がいつでからどれくらい経っているのか? とか。


 それと、なんで消し飛ばしてやったハズのが存在してるのか? とか。


 そして、何よりも優先して確かめなければならい事――父さんと母さんと兄さんは今も幸せに生きているのか? などなど、今すぐにでも動いてハッキリさせるべき事が山積みだ。


 一応、ふざけてんじゃねえのかってぐらいに鋭い五感とか魔力が使えた事とかから察するに、今の僕はフツーの中学生じゃなくて、魔界でになった個体であるのは間違いないから、過去改変が上手くいかなかったってのはあり得るな……いや、がこうしてピンピンしてるって時点で、もうほぼほぼ確定的だけど。


 ……ま、『僕のまんま説』は一旦脇に除けとくとして、取り敢えず気になる疑問は知っていそうな連中から聞き出すとしよう。

 な~に、戦国時代キューブでは上手くできたんだから今回も余裕余裕。


 と、簡単にばれる嘘で散々はぐらかされたのも忘れて楽観的に考えながら、何故か今までと違って寝ても治まらない頭痛を無視してベッドから立ち上がり、ギリギリカリカリと細かな駆動音が鬱陶しい天井隅を見据える。


「お~い、起~き~た~よ~! 誰か~居ないの~?」


 なるべく能天気に、友好的に聞こえるように呼び掛けてみたワケだけれども、さてさて、お返事は如何に――



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 ……いやね、時計が無いからどれくらい経ったかは知らないけどさ、それにしても無視は無いんじゃなかろーか?


 まーあ?

 僕の考えが正しいのなら、連中は意識を失っていた僕を勝手に連れ込んだ上に、真摯に投げ掛けた質問へ嘘を返してくれたワケだから、最低限声掛けただけでも義理や誠意は十分だと思うし?


 なら、もう御行儀良く待ってるのは終わりにしよう。

 今こそ行動する時だ――なんてね☆


 そんなワケで、早速行動を開始……って言っても、ただ単に魔力を捏ねながらベッドを降りただけだけど。


『そんな事したら、不死身(笑)の黒宮くんはまた頭痛が痛くてぶっ倒れちゃうんじゃねえの』?

『大人しく横になって延々回想でもしてればwww』?


 いやいや、まあ確かに頭痛は治まってないし、魔力を練ろうと段階でもっと酷くなったけど、もう大丈夫。こんなのは我慢できる、ってかどうでもいい。


 だってさ、そんなものに煩わされて父さんや母さんや兄さんの無事を確かめられませんでした――なんて、じゃあ魔物テメエはなんでこんなトコで息してやがんだってお話になるからね。

 つっても、頭痛の所為で魔力の制御が若干覚束ないから、取り敢えず魔法は控えようか。

 幸い、この部屋から出るだけなら生身に魔力強化だけでも余裕っぽいし。

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