第20話

 ……あ、そうだ! ついでだから、魔力ソナーの性能確認もやっとこうか。

 ちょうどココには前の時代には無かった物があるワケだし。

 となれば、準備準備。魔力をコネコネ、ギチギチッと。


「それじゃ早速…………――――フッ!」


 短く吐き出した呼気に合わせて溜めていた魔力が四散し、瞬きを終える頃には薄暗い黒煙が紅い戦場跡地を隅々、その天も地も覆い尽くす――なんちゃって。


 ムムム、なんか今回探知できたのは死体になっちゃった方々とその着物、幟とそれらを汚す血に、あとは集まったカラスさん達を始めとした達だけみたい。

 う~む、予想してなかったワケじゃないから驚きってヤツは無いけど、やっぱ引っ掛からなかったか~、金属類。


 いやね、別に大切でもない事を繰り返すようで悪いケド、僕の魔力ソナーって元人里現戦場の平地をスッポリ覆ってるじゃん?

 なのに、刀とか槍とか甲冑がまるで探知できないんだよ。

 一応、巻かれてる布とか紐とか、槍の柄に使われてる木とか、甲冑に塗られてる塗料とかは探知できてるからそれで補えるけど……ん~、怖いな~……


 ん? なんでって決まってるでしょ? せっかく、父さんや母さんや兄さん達に会えても、また車にでも突っ込まれたら大変じゃん。

 そりゃあ、僕は目も鼻も耳も利くし、ソナーだって車体に塗られた塗料とかで察知できるハズだから問題無いかもだけど、どうせならもう脅かされたくないでしょ?

 だから、なるべくなら脅威になるの時点で逃さず摘めるようにしたいんだけど、なかなか難しいかな……


 まあでも、今までの傾向を鑑みて『魔力ソナーは無機物を透過する(仮説)』ってのが分かったのは収穫って言えば収穫なんかね。

 ソレの裏付けってワケじゃないんだろうけど、地面を疎らに覆ってた血の水溜りで、地中に浸透する筈の魔力が部分的に阻まれてるみたいだし。


「――アレか……銃とかをソナーに掛けたら、弾の火薬とか撃鉄に付いた煤とかを探知すんのかな……んま、その辺も次以降で確かめりゃいっか」


 なんだかんだ言っても、まだ僕の予想が正しかったかどうか確かめ切れてるわけじゃないし、それに横軸の方のキューブがどうなってるのかも確かめないといけないだろうしね。


 はてさて、それじゃあ、そろそろこの辺で御暇すると致しやしょう。

 最初のキューブを出た時と同じく、魔界での時より多めの目方で魔力をコネコネし、今までの使用で既にコツを掴みつつあるイメージを形成。


「……――――ッ!!」


 魔力ソナーの時よりも鋭く呼気を吐き出しながら、練り上げた魔力を原色のペンキをぶちまけるみたいな濃度で放出し、頭で描いたイメージをなぞらせて魔法発動。

 すると、放出した魔力が空中の一点に収束し、飴玉みたいな大きさにまで縮んだ所で炸裂。

 グニャグニャと目前の風景を歪ませる門が、布に染み渡る血のように空間を侵食し、一瞬で僕を呑み込めるようなサイズにまで広がった。


「それじゃ――戻ろっか」


 確実に聞いたヤツは居なかったろうけど、それがこの時代で僕が口にした最後の言葉だった。

 ポッカリと口を開けた陽炎のような不思議洞窟の入口へ踏み出しながらのセリフにしては、チョット気楽過ぎたかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る