第11話
もう幾つ目かも分からない森の上空を通り過ぎる途中、偶然耳にした水音が聞こえてくる方向へ視線を巡らせたら、なんと森の木々の間から煙が上がっていたんだ。
いや~、見付けた瞬間はもう嬉しくて嬉しくて、テンション上がり過ぎて思わず『よっシャァァァアアアアア!!』とか『デリャァァァアアアアア!!』とか『ゴギャァァァアアアアア!!!!!!』とかの奇声上げちゃったゼ♪
……声がデカすぎた所為か、森中で鳥や獣が悲鳴みたいな声挙げてた気がするケド。
……にしても、魔力放出の燃費と出力が大分悪いな。
これ多分、今の調子を
まあ、そんなカンジで文明の気配が遠過ぎる静かな森林で騒音を撒き散らす竜人が到着したのは、森の中にポッカリと現れた川原で焚火をしている誰かの頭上だった。
さて、ココで突然だけど、魔界で生き抜く為に獲得した基本技能についてオサライしよう。
『魔物が済む世界』という名前の通り、魔界にはひ弱な人間の命なんて簡単に脅かせる多種多様な怪物共がウジャウジャしている。
それこそ、多彩な生命が跋扈する赤道直下のジャングルみたいに。
当然、そんなデンジャラスゾーンに永住する気なんて皆無なワケで、魔界をアッチコッチ巡って人間界への帰り道を探すんだけど、そうするとウジャウジャしてる
最初は逃げた。それこそ一目散に、来た道を引き返して。
でも、逃げた先で別の
で、そっからスプラッタな虐待拷問と個人的なパラダイムシフトを経て脱出したんだけど、それで
それじゃあ、どうやって生き残ったのか。
答えは簡単、戦ったんですよ。
逃げ道ばかり探していた目で真っ直ぐ睨み付けて、逃げ出していた足を前に踏み出して、行く手を遮る茂みや小枝を掻き分けていた手を握り締めて!
唯一の味方を亡くして独りぼっちになった僕には、それ以外に身を守る術が無かったからね。
そんで、ココからが本題。
一体一体まるっきり違う姿をした異形共の群を打倒するにはどうすれば良いでしょうか?
答えはこれまた単純で明快なんだけど、ズバリ『敵を知り、己を知れば~』ってヤツです。
要するに敵をよく観察して動きを予測しろって事なんだけど、敵は常に複数だったから至極難しい。
全方位を網羅するコツとしては、視覚だけに頼り過ぎちゃいけないって事かな。
いや勿論ね、ちゃんと目で見てさ、手足や爪や角や牙や翼や翅や触手なんかの
でもやっぱりそれだけじゃ対応しきれないからね、相手が放つ駆動音や呼吸音に
そりゃあ、最初は数が多過ぎて上手くできずに苦労しましたよ?
フェイント、初見殺し、理不尽なハメ技、嫌らしいバフ、デバフの重ね掛け、状態異常のオンパレード、圧倒的な物量、ステータスの暴力……それこそ、『Die』ジェスト的トライ&エラーの繰り返しですた。
だけど、そうやって観察し続ける事で、未来予知に迫りそうなレベルで相手の攻撃予測ができるようになったり、思考速度の加速で世界をベリースローリィに認識できるようになったりもしたから、観察はまさに基本にして重要な技能なのでセウ。
まあ、そんなカンジでその誰かへ、もはや習慣を越えて習性の域にある観察眼を向けた所、どうやら、その誰かにも僕の奇声が聞こえていたらしく、無人島でサバイバルでもしてるような黒曜石の石槍を手に身を屈めながらキョロキョロと警戒していて――って、は? 石槍?
と、記憶野の遥か彼方へ追いやられた学校教材の知識と符合する
「――――!?!!!!」
高速で迫る僕が奏でた風切音にソイツが顔を上げようとした頃には、既に終わっていた。
ソイツは身長だけは僕より少し高いくらいにしか見えないのに、やけに野性味溢れる筋肉質な身体つきをしていて、手足も首も変身前の僕より確実に太く、見るからに荒事には慣れてますってカンジだった。
けど、魔力のまの字も感じられないような相手なんか楽勝だ。
獲物を発見した猛禽類みたいな勢いで隙だらけの背中へと迫り、槍を握る右手と首を両手で鷲掴みにして、立て膝を着くみたいに背中を踏み付けてやると、ソイツは何の抵抗もできないまま簡単に組み伏せられちゃったゼ。
ついでに、唯一の武器である石槍の方は尻尾で取り上げて粉々でござんす。
「オマエは誰だ? ドコから来た?」
なんか、自分でもビックリするぐらい冷たい声が出てきたけど……まあ、仕方ないよね?
だ~って、コイツ武装してたし。
武装してたって事は
れっきとした正当防衛だよネ!
しかも、これで
今までが散々だったんで直前まで忘れてたけど、殺
父さんがダメって言うなら母さんも兄さんも快く思わないだろうから、これからはしっかり加減ずるよう気を付けないと。
……魔物?
いや、
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