第12話
「$&%#=|+*、<$=>*%&!」
「……何言ってんのか分かんねえよ。フザケてんのかトボケてんのか知らねえが、マジメに答えねえなら
ジタバタと暴れる上に聞いた事すら無いふざけた言語で喚く相手を、ワザワザ無傷のまま組み伏せ続ける……いやはや、幾ら久方ぶりの対人コミュニケーションとは言え、我ながらなんて
初見で生かしたまま傷付けないように気を使って取り押さえた事も然る事ながら、相手がちゃんとした答えを返すまで待ってあげるだなんて。
魔界では出会った端から誰も彼も
ん? 『頭、大丈夫? 魔法(笑)って言い始めた時より心配なんだけど……』、『きっと、極度のストレスで病んでしまったんだね……』だって?
えッ!? 何、コレでもダメなの!? こんなに優しくしてるのに!?
「――『言って』#*!? +@『に』――『せ』!!」
……ダァ~メだ、やっぱ何言ってんのかゼンッゼン分かんな――って、んん? 今、少しだけ意味不言語に日本語が
――ガサガサッ、バギン!!!!!!
結構な間近で上がった物々しい効果音に釣られ、僕とその下の誰かが揃って顔を上げた。
二人の視線が向かった先は薄暗い森の入口だったけど、そこに立っていたヤツはどう見ても会話どころか意思疎通さえ難しそうな
木々の陰からヌッと現れた森のクマさん(ホンモノ)は、四足の状態で既に僕よりも一回り背が高くて、横幅なんて比べるべくもない。
全身は硬そうな焦げ茶の剛毛に覆われていて、ココまでワザワザ走ってきたのか、中指くらいありそうな長い牙を見せびらかすように大口を開けて荒い息を吐いている。
「『こ』¥>$『はオッカミヌシさ』&『ッ』!? 『さっきの』#%『で目覚められたか』!?」
「コイツは……クマ、か? なんか、思ってたより小さく見えるんだが……いかんな、スケール感が狂ってやが――って、オイ! アンタまともに喋れんじゃねぇか!! さっきのはナメてたって事で良いんだな!? そうなんだな!?」
オレに押さえられたまま二つの言語が重なった奇妙な喋りで訳知りっぽい事を叫んだ誰かの所為でクマさんから視線を外してしまったけど……まあ、大丈夫か。
元々、足音や呼吸音、臭いや微妙な空気の振動なんかで近くに居る事は分かってたし。
そもそも図体だけで魔法どころか魔力の気配すらしないようなヤツなんて敵じゃないし。
え? 『じゃあ、なんで熊じゃなく人間の方に飛び掛かって行ったんだ? 危険度なら熊の方が何倍も高いだろ?』だって?
いやいや、人間ですよ?
現代日本でですら蜂や熊以上に人間を殺してる凶悪な生き物ですよ?
そんな危険生物が
「――グォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
と、少し目を離した隙に、森のクマさん(リアル)はけたたましい雄叫びと共に戦闘態勢を整えていた。
自らの最強武器である両手の鉤爪を存分に振るうべく後ろ足二本で立ち上がった姿は、まさに聳え立つ断崖絶壁のような重圧を醸し出している。
……のだけれど、何故だろう?
僕にはその姿がまるで命からがら逃げ伸びた先で追い詰められて万事休すってカンジに見えるし、大音量の威嚇も恐怖に凍える手足を鼓舞する為の絶叫に聞こえる。
しかも、クマさんと僕らの間合いはさっきから一センチたりとも縮んでいない。これじゃあ、柵越しに吠える小型犬ちゃんと大差無いじゃん。
でも、しかし、だ。
こうしてクマさん側が
まあ、コッチが先に話してる間に割り込まれたカタチだけど。
ってなワケで、そうしたモロモロを胸に秘め、それを形にすべく口を開く。
「ゴギャァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
……僕の胸中に渦巻く感情を一身に背負った言葉(?)は、何故かクマさんの雄叫びが仔犬の悲鳴に思えるような重圧を辺り一面へと撒き散らしていった。
「――――――『ッッッ』!?!!?! 『ィ、ギガ』…………『み、耳が』……」
いやね、僕としては精々『うるせえ!! まだ話してる途中だろうがッ!! 後で相手してやるから待ってろッ!!』って叱るつもりだったんだよ?
ただ、チョット虫の居所が悪かった所為で言葉にならなかったというか――できなかったというか……
あ、クマさんが押し負けたみたいにへたり込んじゃった。
しかも、そのまま大人しくエサの順番待ちでもするように、コチラを窺いながらプルプルと座り込んでる。カワイイ。
どうやら、僕の言葉(?)を理解してくれたみたいだ。
うんうん、これでお話しが再開できるね……脅かしてゴメンナサイ。
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