幻想曲

幻想曲

「語り部」「神の火」


語り部 震度6強

マグニチュード8.6


大地震が襲った

家は崩れた

母と子が崩れた家屋の下敷きになった


三日間の捜索の末

二人は遺体で発見された


母は娘を抱くように

娘は母に寄り添うように


その表情はまるで

睦まじい幸せに包まれて

太陽の光を含んで

駆け抜ける風のように


静かで

安らぎに満ちていた


草原があった

大樹があった

その枝は少年を抱くように

少年はその枝に寄り添うように


それはまるで

幻想に抱かれた

飽くことのない遊びのように

時に眠りの中に誘う喜び


やがて大樹はその姿を消し

少年は風となった


一体の天使が

その意識を拾い上げ

その大きな腕に抱え込んだ


ふたつの光が生まれ

ふたつの太陽が生まれ

二つの月が生まれた


神の火「地震が来るよ」


天使は、今一度つぶやいた


神の火「わが名は神の火」


天使は目を閉じた


神の火「母は子を守り、子は母に寄り添うよう」


天使は二つの太陽と月を空へと放った

神の火「地震が来るよ」


天使は言った


神の火「飢えることも、乾くこともない、光の振動」


天使は微笑んだ


神の火「光という電磁波に、揺れる魂の大地に」


そう言って、天使は消えた


光という電磁波の

揺れる魂の大地に

光の地震に

見出されし

睦まじき愛よ


睦まじき愛よ……

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