第4話

井上が俺の家に家出してきて今日でちょうど一週間。家出と言っても俺が井上の母さんに連絡したので家出と言えるかわからないが。ちなみに井上にはリビングで寝て貰っている。俺の部屋でもいいのだが狭すぎて寝る場所がなかったのだ。


「腹減ったな。」

井上は陸上部に入っているため練習に行っている。そのため、自分のだけ用意すればいい。今日は何を作ろう。もともと料理は出来るの飯については困らない。昼飯を食べながらもあの封筒について考えてしまう。あれはなんだったんだ?何故か封筒について考えると胸がざわざわする。そして井上が言っていた『運命を開く』と言う言葉も気になる。何度も忘れようとしたがその意思とは反対に強く頭に残ってしまう。何か大事な人を忘れているような。そんな気がしてしまう。イタズラのはずなのに。イタズラだと思いたいのに…。思いたい?


その日の夕方、またポストの上に全く同じ封筒が置いてあった。封筒の中には黄色の小さな花弁がたくさん入っていた。今度はなんだ?とりあえず井上が帰ってきたら聞いてみよう。そう思いながら俺は心の奥底で何故か暖かな、懐かしい気持ちになっていた。

それから約一時間、井上が帰ってきた。

「んで?今回は何が入ってた?」

「これだ。」

俺は封筒ごと渡した。封筒から出すと花を片付けるのが大変になりそうだからだ。

「なるほどな。これはセイダカアワダチソウ。花言葉は『元気、生命力』だ。」

なんか俺とは無縁そうな花言葉だな。俺は必要最低限動きたくないし、てきとうに毎日過ごしてるし、てきとうに?あの時先生に言われた時は意地でも認めたくなくて忘れようとしてたのに。俺は逃げてるのか?そうぐるぐる考え込んでいるところに井上が話しかけてきた。

「お前心当たりないわけ?昔の知り合いとかさ?」

「俺も考えてるけどさ、いるような、いないような。むかしあったことがあるような。」

誰かいたはず。けど思い出せない。確か、好きだった人、好きだった…?あー、分からない。よし違うことを考えよう。

「そういえば花火、再来週だよな。竹内との。」

すると井上は真剣な顔つきになり

「あぁ。だけだその日の午前中父さんともう一度話し合ってくる。もしそこで大学に行かせてもらえることになったら俺は竹内に告る。もし認めてもらえなかったら竹内と出掛けるのは最初で最後にする。」

と言った。決意表明するように。俺はその真っ直ぐさに逃げたくなった。

その後、ふたりでバカ話をしてからベッドに入った。俺は井上と友達で楽しい。だがときどき井上といると自分が惨めになっていく。井上は頭は悪い。運動も中の上くらいだ。だが誰よりも努力している。それにひきかえ自分は頭も良く、運動神経も良い。だが努力は何もしていない。いつも逃げてばかりだ。進路のことだってそう。将来が分からないから怖くて逃げ出してるだけだ。いつからこんな風に俺はなってしまったのだろう。小学生低学年の時はいつもひたすら努力してたのに。けど、何を努力してた?いつからこうなった?


『…約束だよ。』君は誰ですか?











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