第3話

その日の夕方家に帰ると、ポストの上に封筒がおかれていた。見た目はただの白い封筒でそこに小本 紫暮様と、俺の名が黒い文字で書かれていた。差出人の名前は書かれておらず、住所や切手が貼られてないことから誰かがポストの上に置いたのだろう。中に何か入っている。俺は封を切った。

「栞?」

何故か封筒の中には押し花が貼り付けてある栞が入っていた。

「誰からだ…?花、花、植物、植物、植物!」

もしかして家が植物園の井上か?でもなんで?とりあえず電話をかけてみよう。俺はそう考え携帯を鞄から取り出した。だが次の瞬間、家のインターホンが鳴り電話をかけることは叶わなかった。井上に電話するのは後でもいいか。俺はそう思い、とりあえずインターホンを鳴らした主を対応すべく相手を確認すると、

「はーい。どちらさまで…!」

なんと今電話をかけようとしていた相手がいたのだ。とりあえず俺はドアを開けた。そこに立っていたのは学校での雰囲気と一変、負のオーラをまとった井上がいた。

「しばらく泊めてくれないか?」

俺を見るなり早口にいった。様子がおかしい。とりあえず俺の部屋に連れて行くか。

「分かった。」

俺は短く答えた。

「…。」

「…。」

空気が重い。こういう時ってどうしたらいいんだ?何があったか聞いていいものなのか?こうなったらとりあえず封筒について聞いてみよう。

「なぁ、この封筒知ってるか?」

「なんだそれ。」

怪訝な顔をして、そう質問を返してきた井上。何故か安心したきがする。何でだ?井上じゃなくてよかったと思ってるのか?それとも其の手紙を知らない誰かから貰えて嬉しいのか?なんかモヤモヤする。けど何か懐かしい気持ちになる…。

「おい聞いてるか?」

考え込んでいて井上の質問を忘れていた。

「あっ、だからえーと、この封筒がポストのところにあったんだ。」

「ふーん、ポストの上か…。中には?」

どうやら興味を持ったのか井上は聞いてきた。

「この栞が入ってた。」

俺は栞を渡した。栞を見つめている井上、しばらくして

「『運命を開く』か。」

と、呟いた。

「そんなこと書いてあったか?」

文字なんて書かれてた気がするけど。

「遠回しにな。この三つの押し花あるだろう。この花は全部プリムラという花なんだが、全部種類が違う。右側の薔薇のような花がプリムラ・ジュリアン、真ん中の少し大きいのがプリムラ・オブコニカ別名、常盤桜で最後の、中央部分が黄色星のようになっているのがプリムラ・ポリアンサ。この三つの花はそれぞれいくつかの花言葉をもっている。だが一つだけ三つとも持つ花言葉があるそれが『運命を開く』だ。」

なるほど。分かりやすい説明だ。まぁそれを伝えたかったのか、たまたまだったのかは知らないが。

「さすが、植物園館長の息子だな。」

思ったことを口に出しただけだったが「…。」

どうやらまずかったらしい。もうこうなったら開き直ってやる。

「何があったかくらい聞いてもいいか?」

井上はしぶしぶ口を開いた。

「俺さ、将来の事は自分で考えたかったんだ。だからさ、色んな事が学べる大学に行きたかった。だから勉強も頑張った。だけどそれを父さんに行ったら『大学に行かせない。植物園を手伝って、その後俺の後を継いで館長になれ』なんて言うんだ。だから家でしてきた。くだらないと思うか?」

「くだらなくないと思うぞ。とりあえず俺ん家泊まっていけ。」

何を答えていいのかわからずそう答えてしまった。井上の母さんは会ったことあるが井上の父さんにはあったことないのにもかかわらず。

「ありがとう!そういえばお前んちの親は?」

遊びに来ると大抵いる俺の母さんのことを井上はいってるのだろう。

「夏休みの間、両親二人で旅行。俺も誘われけど友達との予定があるって言って断った。嘘ではない…だろ。」

俺がそう言うと楽しそうに

「夏休みの間よろしくお願いします。」

と言ってきた。普段の井上に戻ってきてよかった。


「あっ、荷物何にも持ってきてねぇー!」

「取りに帰れ!どうせこの時間なら家にだれもいないんだろ。」



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