新緑のルニア

NEO

新緑の悪魔

 木漏れ日が差す中、私はそこに佇んでいた。

 周囲には危険な魔物も俳諧しているけど、私には全く関係ない。

 今日もまた、一組の人間……いや、他の種族も混ざっているかな……。ともかく、数は五人。私を目指してやってきた。腕利きである事は間違いない。ここに至るまでに、何度も遭遇するであろう魔物を退けるには、それなりの腕が必要となるはず。

 もう、これで何回同じ事をやったか分からないが、私は少しイタズラをしてみた。入り口を固く塞いでいたドアの鍵を外し、そっと開いてあげた。

 いきなりの事に、五人は一斉に驚きの声をあげた。フフフ……。


 さすがに腕利きだけの事はあって、喜び勇んで突入してくるような事はしなかった。慎重に罠の確認をしながら、ゆっくりと私の体内に入ってくる。もちろん、こんな場所に罠なんてない。あるわけがない。もっと体の奥深くで、ゆっくりと飲み込んであげるための、ちょっとした小道具なのだから……。


 五人組が残らず体内に入ったところで、私は勢いよくドアを閉めて鍵を掛けた。これでもう、私がその気にならない限り、二度とこの五人組は日の光を浴びることはない。いかなる手段をもっても、このドアを破壊する事は出来ないのだから。つくづく、私の創造主は悪魔的な事を考えたものだ。


 五人組は驚いたようで、しばらくドアと格闘していたが、もちろん私だってそう簡単に「オモチャ」を手放すつもりはない。久々に遊んでみたい、いかほどのものか……。

 しばらくしてようやく諦めたらしく、五人組は前進を開始した。今までの最高記録は六階層。先に言ってしまうと、私の体内は全てで十階層ある。この人たちはどこまで行けるかな?


 まずは小手調べの一階層。魔物しかいない。でも、それなりに強めのものを放ってみた。

 ……なるほど、簡単に突破したわね。フフフ、そうでないと。

 続く二階層は嗜む程度の内部構造変化と軽い罠。さすがに少し手間取ったようだが、さほど苦労なく突破。フフフ……。


 三階層からが本番。とりあえず、罠多発ゾーンで二人死んだ。大丈夫。私が永劫見守ってあげるから……。三人に減ってしまったオモチャに対して、私は強靱な魔物という意地悪をしてみた。

 ……あら、簡単に突破しちゃった。やるじゃない。フフ。


 三人組は私のイタズラにもめげず、ついに前人未踏の七階層へ。結構やるなとは思っていたけれど、ここまでとは思わなかった。楽しくなってきた。


 ……へぇ、ちょっとビックリよ。

 たった一人になってしまったけれど、ついに最深部に初めて人が立った。

 ご褒美に、ここは魔物も罠もなくして、唯一ある部屋の一本道にしてあげる。それこそが、最大の罠なのだから……。

 満身創痍の男が行く。ただ一人。慎重かつ力強く。罠などないのに念入りにドアの確認をして、最後の力とでも言わんばかりに力一杯押し開ける……そして、愕然とした表情を浮かべた。

 ……これ、これが見たかったのよ。フフフ。


 私の体内には、巨万の富が眠っている……とされている。

 しかし、その最奥部にある部屋の中央には、台座に載せられた一枚の羊皮紙があるだけ。


『お疲れさま 新緑のルニア』


 ……そう、私の名は「新緑のルニア」。人間の言葉に変えると「新緑の悪魔」。


 あなたも遊びたくなったらいらっしゃい。いつでも歓迎するわ。もっとも、帰すかどうかは、私の気分次第だけれど。

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