第2話 山中にて

 ツチノコは最終的には博士たちの依頼に、

「まあ、やってもいいだろうかな。だが、オレのペースでやらせてもらう」

と答えたのだった。


 つまるところ、ツチノコは博士たちの依頼を引き受けたのだった。その物言いに博士と助手は一瞬顔を見合わせたが、

「かまわないのです。細かいことは任せるのです」

と博士が答えた。

「その代わり、ヒトに関わるものを一つ以上は持って帰るのですよ」

 さらに助手が付け加えて言った。


 そして翌日、ツチノコは四神がある山に向かったのだった。


 山の中腹も過ぎれば島の全景や海を見渡すことができた。

「おー、ここもすごく眺めがいいのです」

 スナネコが呟いた。

「そうだろ、ここは島の中でも標高が高くてー、ってスナネコ、お前はどこまでついてくるんだよっ!」

「おもしろそうなので…」

「まあ、いい。好きにしろ」



 ちなみに、何故スナネコがついてきたというと、


「ぼくもついて行ってみてもいいですか?」

 博士たちの依頼を受けた後、スナネコはツチノコに訊ねた。

「な、なんだって?」

 ツチノコは驚いた様子で訊き返した。

「なんだか、おもしろそうなので…」

「はー、お前なぁ…。まあ、好きにしろ。言っとくが、ジャパリコインはやらんからな」

 ツチノコは少し呆れたような、それでいて少し楽しんでいるような表情をして言った。

「かまわないです」


という訳あって、ここまでついてきたのであった。



 ツチノコとスナネコは言葉も交わさず再び山を登り続けた。しばらく進むと二人の視界に何やら黒い色の尖った形をしたものが入ってきた。


「これが、もしかして…ってやつなのか?」

「おー、とても大きいのですね」

 近くまで来ると、二人は呆然と見上げて呟いた。それは地面に突き刺さるようにしてそびえ立つ飛行機(正確には、その残骸)の姿であった。

「ともかく、何かないか探す!」

 ツチノコは気持ちを切り替えるかのように言うと飛行機の周辺をうろつき始めた。

 それからツチノコは飛行機の中に入ろうとしたが、掴むところも無く、滑らかな表面の飛行機にはしがみ付くこともできなかった。

 しばし腕を組んで悩んでいたツチノコであったが、そのとき

「ツチノコ、あっちのはなんでしょう?」

とスナネコが声を掛けてきた。

 スナネコが指を差した方向にはツチノコが見ていた黒い飛行機にも劣らない大きさで、灰色がかった筒状のものが横たわっていた。それの中央部からは翼のようなものが突き出していた(ツチノコは判断がつかなかったようだが、実際のところ、これも別の飛行機の残骸であった)。


「行ってみるか…」


 今のところ収穫のないツチノコはそう言ってスナネコと共にそちらへ向かった。

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