第12話

 ザァァァァ──。一陣の風が吹き抜けました。

 見渡すと、此方森の縁から地平線の遥か彼方までお花畑が広がっていました。トワイライトが全てを包み、濃く影を作っていました。

 アイスリンが視線を左に向けると、そこには長テーブルがポツンと鎮座していました。それには場違いなまでに汚れ一つ無いテーブルクロスがかかっていました。

 アイスリンはテーブルにゆっくりと近づきながら、お茶会までどうしようかと考えました。

「ワシは梟と申す。お主が紙魚の代わりか? いやはや、ちと若過ぎはせんか?」

 梟がツカツカと歩いて来ました。

 アイスリンは一瞬固まった表情をほぐすと、

「これはこれは梟殿! お初にお目にかかる。紙魚殿の代わりとして参上仕った、アイスリン=ウォルシュと申す者です。どうぞアイシーとお呼び下さい」

 かなりギクシャクしつつも背筋を伸ばして言いました。

「……そうか、まぁ良い。招待状を置きたまえ。それで受付が済む」

 そう言って梟は背広の胸ポケットから白い封筒を取り出すと、長テーブルの上に置きました。すると一瞬光ったかと思うと、封筒は消えました。

 アイスリンもそれに倣うと同じことが起きました。

「成程、お主は真に正式な代理なのだな」

 梟は頷きながらその様子を見ていました。

 それからアイスリンは梟やその後やって来た人達と談笑し、時間を潰しました。

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