第13話

 ここは城下町の『ナンナの鍛冶屋』という店だ。

 ナンナというのは土の神様らしい。それで、土といえば鍛冶の得意なドワーフ。その繋がりでナンナの鍛冶屋という名前にしているそうだ。


「坊主の職は何だい? おすすめのを選んでやるよ」


「大剣士です」


「この年齢で大剣士ね……」


 こちらをじろじろと見る店主さん。良介に匹敵する肉体と髭の生えた面はまさに鍛冶屋の親父・・・・・・だ。


「筋力は?」


「えーと……300です」


 たった数日。されど数日。

 伸びこそ悪くなっているが、来たばかりの頃とは3倍も差がついている。


「ふうん」


 疑っているのか、未だにじろじろとこちらを見るが、やがて諦めたような顔をする。


「おい坊主、これ持ってみな」


 店主は足元の箱から一本の巨大な剣を取り、差し出した。

 いや、それを剣と呼ぶのは烏滸がましい。刃は丸められていて、所々に傷がついている。


(剣と呼ぶより棒だな)


 ははっと笑いながら、その鉄の塊を受け取る。

 うわ、重い。ていうか、これほんとに鉄の塊なのか?


「お! これを軽々と持ち上げるか。筋力300超えは嘘じゃあ無さそうだな。ちょっと待ってろ」


 店主は床の木を軋ませながら、カウンターの奥へ入っていく。

 これ、結構重いんだけど……。



 数分たった。腕が結構辛い。

 実は、重力倍加の付与掛けてましたとかありそうなんだけど……?


「おう、待たせたな」


 店主が奥から黒い剣を持って出てきた。所々に青い刻印が施されている。

 何それ。めっちゃ格好いいんだけど……。

 ふと、隣を見る。

 良介が赤いガントレットを手に持ちながら、きらきらと目を輝かせていた。


「これは『黒鋼』言つう魔法の触媒にもなる鉱物を使ってる最高の逸品だ! 刻印の数は四。第二位階魔法が毎日1回使えて2回まで貯めれる!」


 これまた、凄いものを……。

 王国から貰った装備品代は白金貨10枚。日本円にして1千万円分だ。

 異世界人の優遇っぷりが半端ないと思ったら、ヴォルさん曰くそこまで優遇するのはこの王国くらいらしい。

 まあ、1千万使い切るつもりはないけど……。


「お値段は……?」


 店主はにかっと笑った。


「白金貨6枚だ!」


 うっ、日本円にして6百万。

 厨二魂が買えと叫んでいるが、無理やり理性で押さえつけ、断ろうとした瞬間


「親父、それくれ!」


 あちゃー。後ろから声が掛かった。その声はよく知っている。

 勇者ということで貰った装備品代は白金貨50枚。数日間の訓練で魔力は既に1000を超えたクラスメイト…………勇增武雄だ。

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