第10話
「「お前の超級スキルって何だ?」」
そう尋ねたのは同時だった。
良介も驚いた顔をしている。気になったのは超級スキルの空白なのだが、俺のはしっかり記入されていたはず……。
そのとき、ドランさんの声が聞こえた。
「超級スキルというのは絶大な力を持つスキルじゃ。そこまで研究が進んでおらんが、1つわかっておる。それは他人には見えぬことじゃ。他人に教えることはやめたほうがいいぞ。いつなん時、裏切られるかわからんからのう」
良介と顔を見合わせる。
裏切る? 友人が裏切るわけがないのに?
まあ、教えてもいいかな……
「おう! 2人ともどうだった?」
良介が俺に向かって何か言おうとした瞬間、優が後ろから声を掛けてきた。
「良介はすごかったんだけど……俺はそこまで良くなかったよ」
「そ、そっか。俺はそこそこ良かったよ。こんな感じ」
個体名:古野優
種 族:人間族
職 :白魔道士
体 力:100
魔 力:250
筋 力:80
耐久力:80
敏 捷:80
総合戦闘評価:C+
超級スキル:『 』
固有スキル:『詠唱魔法』『魔力削減』
あれ? 俺、優と同じくらいかも? 魔力が異様に尖っているが、その他は俺よりも弱い。
「うわ! 良介すごっ!」
優が良介のステータスを見て、驚いている。
やっぱり、良介は凄かったみたいだ。
と、考えたとき、ドランさんが珍しく素っ頓狂な声を上げた。
「勇者じゃと!? 世界で4人目の勇者がこ、こんなところに!?」
ふと、そちらを見ると……自慢げに胸を張る武雄の姿があった。
個体名:勇增武雄
種 族:人間族
職 :勇者(覚醒前)
体 力:350
魔 力:500
筋 力:200
耐久力:150
敏 捷:200
総合戦闘評価:B+
超級スキル:『 』
固有スキル:『筋力強化』『魔術補正』『近接戦闘補正』『縮地』『聖剣召喚』
……。ドランさんが驚くのもわかる。異常なステータス。多すぎる固有スキル。チートとしか言いようがない。
「さ、さてと、思わぬトラブルがあったが、一旦カードの表記について説明する」
ざわざわと騒いでいたクラスメイトが静まる。
「うむ。皆、凄まじいまでのチートじゃったのう。では、これより能力に関して説明する」
ごほんと一つ咳払いをすると、辺りを見回しながらゆっくりと説明し始めた。
「このカードはステータスカードと呼ばれる魔道具じゃ。その者の情報を読み取り、表示する。ステータスの平均は職なしの成人で50ほど。職ありであれば120ほどじゃな。お主らの年齢であれば、平均は100じゃ」
……あれ、平均100? ぴったり平均なんですが……。
「スキルは特殊な技能のことじゃ。使いたいと思えばすぐに使えるぞ。自分のスキルであれば、頭の中で鑑定と念じれば、説明が表示される。これもまた、原理が一切解明されておらん」
多分、この瞬間、クラスメイト全員が鑑定と念じただろう。
俺は『転生』を鑑定した。
すると、頭の中に情報が流れてきた。
転生:転生する。任意発動。
…………これだけ? 突っ込みどころが多いんですが……。転生するって何だよ。転生するって。
任意発動で転生するとか……外れスキルじゃないですか……。
第一、記憶はどうなるの? 人間に転生できるの?
駄目だ。説明が足りなさすぎる。
「ステータスの説明はこれで終わりじゃ。何か質問のある者は?」
武雄が手を挙げた。自分が勇者であったからかやけに自信の満ちた顔で……。
「爺さんのステータスはどうなんだよ? 俺らは見せただろ? 見せてくれよ」
その意地の悪い顔。何を考えているのかは簡単にわかる。
先程、ドランさんは言った。世界で4人目の勇者と。それだけ貴重なのだから、丁寧に扱うだろうとか思っているのだろう。
「言葉を慎め小僧」
しかし、現実はそう上手くはいかないようだ。ドランさんは静かに……それでいて怒気に満ちた声を武雄に向けた。
「武雄……お主は勘違いしておるじゃろう。勇者はこの世界に4人も・・・おるのじゃ。儂の職は英雄王……世界唯一じゃのう」
ドランさんは真っ黒のひげを撫で、銀色に煌めくカードを武雄を投げた。
「そして、お主の質問に対する答えがこれじゃ」
銀色のカードはくるくると回り、武雄の額に当たるぎりぎりでぴらりと静止した。
重力を完全に無視し、空中で固定されている。
因みに武雄はドランさんの怒気に満ちた言葉により既に気絶していた。
ざまあみろ!
そして、やはり気になるのはドランさんのステータスだ。世界唯一の職……その実力はどれほどなのだろう。
個体名:(隠蔽)
種 族:人間族
職 :英雄王
体 力:3500
魔 力:12000
筋 力:4200
耐久力:3500
敏 捷:3000
総合戦闘評価:S+
超級スキル:『 』『 』
特級スキル:『精霊召喚』『悪魔召喚』『天使召喚』
上級スキル:『精霊魔法』『天邪魔法』『魔法耐性Ⅳ』
固有スキル:『筋力強化』『魔術補正』『近接戦闘補正』『思考加速』『思考加速Ⅱ』
格が違った。来たばかりの俺たちと比べるのはおかしいかも知れないが、平均よりも遥かに高い。
スキルの数も1、2、3……数えるのもめんどくさくなる程ある。
「ふむ、興ざめしたわい。誰かそのろくでなし勇者を医務室に運んでやれ。ここに来る前にあったじゃろ?」
老人が寛大な心を持つ……というのはやはり理想なのか……? 高い地位を持っているからか、それとも見た目が優しそうだからかわからないが、やけに短気に見えてしまう。
まあ、悪いのは武雄なんだけどね。
そして、動いたのは意外や意外。武雄の取り巻きの1人の八咫やただ。ただの臆病者だと思っていたのだが、この状況で動くのか……。
ドランさんは八咫が武雄のところへ行くのを目を細めて見ている。
そして、6つの魔法陣が現れた。今度のものは青く輝く魔法陣だ。
「『
青い霧のようなものが八咫の周りに漂い、白い光が武雄を包み込んだ。
付与と聞こえたので、間違いなく強化する類のものだろう。
とか思っても、気になることは変わらないので八咫の行動を凝視する。
普通に武雄の前まで歩いて……。
ひょいと片手で持ち上げた。
大柄な男が小柄な優男に持ち上げられる絵面は……シュールだ。
「ふむ」
ドランさんは八咫を見て、一つ小さく頷くと再び話し始めた。
「次は魔法についてじゃが……安心せい、あの2人には後できっちり教えるからのう」
やけに短気なその老人はふぉっふぉっふぉっと笑い、俺らが最も興味のあるだろうもの――魔法について教え始めたのだった。
そのときのクラス全員の気持ちは同じであっただろう。
八咫…………ドンマイ
────────────
あとがきです。
遅れながらはじめまして、かるごです。
この作品をフォローしてくださった方々、ありがとうございますm(_ _)m
本作品のキャッチコピーの『それは既に世界最強だ』ですが、それは主人公の転生後を予定しています。言葉が足りなくて申し訳ございませんでした。
また、更新は1週間に最低でも1度はしていく予定です。
読んでくださっている方々、稚拙な作者ではありますが、これからもよろしくお願いしますm(_ _)m
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