第9話

 俺らは今、王国の魔法指導教室に集まっている。

 前には黒板のようなものがふわふわと浮いており、その一歩手前にこの王国の宮廷魔導師────ドランさんがいる。

 これから自身らの能力の確認や、戦闘術の指導を行うのだ。


「では、これより能力の確認を行う。まずは手元のカードに血を垂らしてみよ」


 クラスメイト全員が自分の目の前にあるカードを手に取る。

 銅色に鈍く輝くそのカードは、見た目に反して非常に軽い。


「言うまでもないが、血は自分のものを使うんじゃよ? 一滴で大丈夫じゃ」


 ドランさんの言葉を聞きながら、カードのすぐ隣にあった針を手に取る。


 親指でいいかな。

 そう思いつつ、親指にぶすりと針を突き刺す。

 流れでる大量の血。

 言うまでもない。深く刺しすぎたのだ。


「うおっ!?」


 周りからも声が上がった。

 そちらの方を見ると……血をだばだばと流すクラスメイト達が……。


「『第四位階魔法〝エリアヒール〟』」


 慌てる俺たちの周りに、淡い緑色の光が包み込む。

 気がつけば、指の傷が綺麗に消えていた。

 ドランさんの方を見ると、四つの魔法陣が空中にぴたりと固定されている。


「うむ。説明をし忘れておった。異世界人がこちらの世界に来る際、感覚が大きく狂ってしまうのじゃ。生き物を殺すことに何の抵抗も感じなくなるくらいにのう」


 感覚が狂う……? 生き物を殺すことに何の抵抗も感じなくなるほど……。

 神はやはり、戦わせることが目的なのか? チートを持っていて、生物を殺すことに罪悪感を感じなければ……優越感に浸り、戦うことに喜びを覚えてしまいそうだ。


「これ、深く考えんでよいから……。血を垂らすんじゃ」


 そうだった。とにかく、今は能力の確認だ!

 ゆっくりと針を親指に指す。

 血がぷっくりと浮かんできたのを確認し、銅色のカードに親指を押し付ける。

 次の瞬間、鈍い銅色は煌めく銀色に変色していた。

 いや、一部は銅色が残っていて、文字のようになっている。

 そこに書かれていたのは



個体名:佐藤康太

種 族:人間族

 職 :大剣士


体 力:100

魔 力:100

筋 力:100

耐久力:100

敏 捷:100


総合戦闘評価:C


超級スキル:『転生』

固有スキル:『筋力強化』『剣戟補正』




 うおっ! これはすげぇ……のか? チートと言われるだけあって強いはずだ。超級スキルとか見るからにやばそうだ。


「うむ。儂は各々のステータスを確認する。お主らも自由に話していいぞ」


 その声がかかった瞬間、わあっと話し始めるクラスメイト。もちろん、俺も例外ではない。


「康太! 見てくれよこれ!」


 隣にいた良介がカードを見せてくる。

 どれどれ?




個体名:中山良介

種 族:人間族

 職 :拳闘士


体 力:200

魔 力:30

筋 力:200

耐久力:150

敏 捷:200


総合戦闘評価:B-


超級スキル:『    』

固有スキル:『筋力強化』『拳闘補正』




 ……。うん、こいつステータスまでムキムキになってやがる。

 魔力以外、全部俺より強い。

 戦闘評価に関しても、B-とは……。

 ところで、スキルについて気になっていることがある。


「「お前の超級スキルって何だ?」」


 相手からも見えない……のか?

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