第4話 必殺奥義☆その名は煉獄!
「おい、すまないがレイプアという少女を見なかったか?」
「あら? あなたは盗賊頭さんじゃないの」
カレンが宿屋にレイプアを預けて外に出ると、そこには盗賊頭が立っていた。
「レイプアちゃんはまだ日の当たる道を歩けると思うのよね。だからあなたの所に居るべきじゃないと思うの」
「そう言うってことは会ったんだな。あいつはもう俺たちの家族だ。そう約束しちまってる。悪いが何処にいるのか教えてもらおう」
別にすぐに返しても良かったのだが、何となく言った言葉のせいで変な雰囲気になってしまった。今更宿屋にいるなんて言えそうもない。
「どうする? 男根がない俺にはもうお前の魔法は通じないぞ」
「そうね。どうしようかしら?」
実はダンコーンからチジョリアのコンボは男にも有効なのでそれで快楽攻めにしても良かったのだが、何となく魔法しか使えないやつと思われているのが癪に触ったカレンは少し趣向を変えてみることにした。
「別にアンタに魔法なんて必要ないわよ。どこからでも掛かって来なさい」
「この小娘がなめやがってぇ!」
盗賊頭が顔を赤くして大振りのパンチをカレンに向ける。
しかし、それこそがカレンの狙いだった。カレンはワザと相手を怒らせて大振りの攻撃をさせるように仕向けたのだ。
カレンは盗賊頭の右ストレートをひらりと交わして脇腹に膝蹴りを叩きこんだ。 そしてこれがカレンの必殺技の始まりであり、盗賊頭にとって逃れられない地獄が始まる合図だった。
カレンは攻撃の手を緩める事なく攻め続ける。すぐに脇腹に鉤突きを放ち側頭部に肘打ち、顔面と股間に両手突きを繰り出す。
相手が怯んで体を曲げたら首に手刀、そのまま鳩尾に貫手、流れるように顎へ両手を振り上げた。
続いて側頭部に手刀、脳天に向けて鉄槌、中段膝蹴り、股間に背足蹴り上げ。
怯んだところに右中段回し蹴り、続いて左上段後ろ回し蹴り、更に左中段猿臂!
右下段熊手に上段頭突き、鳩尾に裏拳をくらわせたら顔面に裏打ち――
カレンの攻撃は流れるように続いていく。
盗賊頭は反撃する事も、逃げる事も、倒れる事さえできない。
「これが、カレン式対人武術奥義 煉獄よ!」
カレンが自信満々に言ったその言葉を盗賊頭が聞くことはなかった。
・・・
「またやっちゃった」
カレンは時々調子に乗り過ぎてやりすぎてしまうことがある。
今回も少し脅そうとしか思っていなかったのだが、煉獄が思いのほか綺麗に決まっていったので楽しくなって我を忘れてしまったのだ。
今は気付いたらボロボロになっていた盗賊頭を魔法で治療している。
近くで見ていた町の住人たちは魔導士であるカレンの細腕からあんな攻撃が繰り出されると知ってちょっと引いている。対人最強魔導士の面目躍如と言った所だろうか。
ある程度の治療を終えたカレンは大きく伸びをすると立ち上がる。
そしてズルズルと盗賊頭を引きずって建物の壁に寄りかけた。
「えっと、そこの店の人いいかしら? この人が起きたらレイプアちゃんは宿屋にいるって教えてあげて」
「あぁ、別にいいけどよ」
そのレイプアってやつを取り合ってこいつをボコボコにしたんじゃないのかよ! と店の店主はツッコミたくなったが、さっきのやつを見た後だとその言葉も引っ込むというものだ。
「じゃあお願いね」
「おう」
カレンが宿屋に戻ろうと歩き出した時、それはやってきた。
人々はそれを見たら恐怖で膝を落とし震えることしかできなくなる。
それを例えるなら漆黒
それを表現するなら絶望
崩壊龍ダンテがカルダテアの上空からカレンを見つめていた。
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