第3話 女盗賊☆レイプアちゃん登場!

 ある晴れた日の昼下がり――


 カルダテアのメインストリートでカレンは1人遅めの昼食をとっていた。

 今日はノイが用事で出かけてしまったので久しぶりの1人での食事になる。


 最近のカレンは常にノイと一緒にいる。それは魔法を教えるのと同時に彼をあの盗賊たちから守るためでもあった。


 (面倒だと思ってもいたけど、急に居なくなると寂しいものね。)


 カレンは自分の中でノイの存在が思いのほか大きくなっている事に驚きを感じていた。

 カレンは今まで孤独だった。自分はそれで良いと思っていたし、実際それで不自由になったことは無かった。


 しかし人は変わるものだ。いつの間にか他人と一緒にいる事に慣れてしまったのかもしれない。


 「ここにカレンが居るってのは本当かい!?」


 カレンが物思いに耽っていると、店に1人の少女が勢いよく怒鳴りこんできた。

 そして余りに勢いよく店に入ってきたからか店員に叱られている。


 店員いわく扉が壊れるとか他の客の迷惑だとかなんとか。

 それにごめんなさいと謝る背中からは何となく庇護欲が湧いてくるのが不思議だ。


 「カ、カレンってやつはどこだい! 隠れてないで出てきな!」

 「多分私の事だと思うけど、誰?」


 他にもカレンという名前の客はいるかもしれないが、一般人が小さな少女にここまで敵意を向けられる事は少ないだろう。

 勿論カレンにも少女に恨まれる記憶はないのだが、この中では一番可能性が高いように思える。


 「あんたがカレンか! じゃあ親分のカタキを取らせてもらうよ!」


 半泣きの少女が改めてこちらに敵意を向ける。

 ボロボロのフードは不自然な膨らみがあり、よく見ればそれが獣耳だというのが分かる。どうやら彼女は獣人のようだ。


 ますます何故自分が恨まれているのかカレンは分からなくなる。

 獣人には知り合いもいるが恨まれるような覚えはないし、少女が語る親分という人にも覚えがない。


 「……えっと、親分って誰?」


 そんな状態で獣人の少女にいきなりカタキ扱いされたら戸惑うというものだ。

 そもそも自分は正義の味方(自称)なのだから人に恨まれるはずはない。

 そんな事より思いっきりあの子のケモミミをナデナデしたいとカレンは考えていた。


 余談だがカレンはケモミミが好きだ。彼女は時々孤児院に寄付をしているのだが、それはケモミミな孤児たちに懐かれるためだったりする。

 あまりにも露骨すぎて懐かれてはいないのだが。


 「知らないとは言わせないぞ! お前が親分の男根を捥いだせいでアタイらはバラバラになっちゃったんだ!」


 それを聞いたカレンはようやく事情が吞み込めた。

 どうやらこの少女はあの盗賊団の一員らしい。


 「あぁ。アナタはあの盗賊たちの仲間なのね」


 それなら確かに恨まれても仕方がないだろう。

 ちゃんと警告はしたものの、カレンが盗賊頭の男根を捥ぎ取ったのは事実なのだから。


 「親分は奴隷商からアタイを助けてくれた恩人なんだぞ! それに盗賊団のみんなだってアタイを妹みたいに扱ってくれる良い人達なのに!」


 彼女は性奴隷として売られそうになっていた所をあの盗賊団に助けられたらしい。

 助けてもらった後も盗賊団は彼女に一切手を出さず、帰る場所を失くした彼女を家族の様に扱ってくれたんだそうだ。


 (それ、あいつ等がホモで彼女があいつ等の範囲外だっただけじゃない? 獣人は身体能力が高いから小さいころから育てて戦闘員にしようとしたんだろな……)


 真実を知っていても言わない方が良いこともある。

 カレンは言いたい気持ちをグッとこらえた。何も彼女の心を傷付ける必要はないからだ。


 「私はクラック盗賊団のレイプア! いざ尋常に勝負!」

 「あーもう、しょうがないわね。ダンコーン!」


 剣を構えて今にも襲い掛かってきそうなレイプアに向けてカレンはダンコーンの魔法を唱えた。

 ダンコーンとは幻覚魔法の一種で、この魔法を掛けられた相手は周囲の人間が巨大な男根に見えるようになる。


 「きゃあっ! ナニコレ!?」


 今のレイプアの目にはカレンはおろか周囲の人間全員が巨大な男根に見えている事だろう。まだ生娘であるだろう少女には刺激の強い光景に違いない。


 「更に追加よ! チジョリア!」


 そんな少女にカレンは追撃の魔法を放つ。


 チジョリアとは受けた相手が男根を視認しただけで強制的に絶頂を迎えるようになってしまうという恐怖の魔法だ。しかもその絶頂具合は男根の数と大きさに比例する。


 今のレイプアがチジョリアで受ける事になる絶頂がどれほどの物なのかはカレンですら想像できない。


 「あ、ああああぁああっつ!!!」


 まるで獣の様な嬌声を上げたレイプアは白目をむいて倒れてしまった。

 口からは泡を吹き、失禁もしてしまっている。


 「気絶しちゃったか。まぁ、宿屋にでも放り込んでおきましょうかね」


 カレンは少しやり過ぎたと反省しながらレイプアを引きずって店を出ていくのだった。


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