第2話 昼間の攻防☆逆襲の盗賊!
都市カルダテアのメインストリートにある飯屋ゴッタン
かの食神ゴッタン・マーベルが開いた最初の店として庶民向けの食堂でありながら貴族にもファンが多い人気店である。
そんな食堂でカレンとノイは遅めの昼食をとっていた。
「だから、私は弟子とか無理なのよね」
「そこを何とかお願いします!」
カレンは気まぐれで助けた少年を前にして困っていた。
ちょっと可愛い子だったから恩でも売って運が良ければお持ち帰りしようと考えていたのだが、まさか弟子入りを志願されるとは思わなかったのだ。
カレンの得意とする魔法は禁忌とされている精神系の魔法が多い。
そんな自分が弟子を取るのは何だかいけない事の様な気がしてならなかった。
普通の魔法も教える事は出来るが基礎くらいしか教えることはできないだろう。
それだったら魔法学校にでも入学した方がよっぽど良い。
「私の魔法は邪道の物が多いの。だから魔法を学びたいのなら魔法学校に通うのをオススメするわ」
「僕はあなたに教わりたいんです!」
本音を言えばカレンだって美少年に手取り足取り教えたいのだが、自分が教えた事によって彼の人生が変わってしまうかもしれないと考えると、軽々しく弟子にしようとは思えなかった。
「邪魔するぜ」
「いらっしゃいませ」
そんな時、静かな食堂に先程の盗賊たちが乗り込んできた。
心なしか顔色が悪くふらついている盗賊たちだが、カレンを見つけると一直線に向かってくる。
「ようやく見つけたぜ。俺はあそこまでコケにされて黙っていれるほど穏やかじゃなくてなぁ!」
「あら、せっかく気持ち良くしてあげたのに酷い言いがかりもあったものだわ」
盗賊が店の中なのにも関わらず巨大な斧をカレンの目の前のテーブルに叩き付けた。衝撃で机が砕けて破片が辺りに散らばる。
店内がパニックになる。店員が衛兵を呼ぼうと店の外に出ようとするが盗賊がいて出れないようだ。
「殺してやるよ。変態魔導士」
「店の人は関係ないと思うのだけれど」
「衛兵を呼ばれちゃ敵わないからな。危害は加えんさ」
カレンと盗賊の頭がにらみ合う。
緊張感のある空気が店中に充満した時、ノイが悲鳴を上げた。
「何をするんだ!」
気付くとノイは盗賊たちに押さえつけられていた。
心なしか盗賊が彼の尻を凝視している気がする。
「人質ってやつだな。余計な事を考えるんじゃねぇぞ?」
盗賊頭が下卑た笑いを浮かべた。
カレンはそんな盗賊頭を冷ややかな目で睨みつける。
「あなた達、私が手加減していたことに気付かなかったの?」
「何言ってやがる」
盗賊たちはそんなカレンの言葉に怯む。
考えてみれば男根を勃起させる呪文だけでS級魔導士になれるはずがない。
S級という称号はそんなチャチな物じゃないのだ。
「私はあなた達の男根を一瞬で捥ぎ取る魔法だって使えるのよ? もしかして女の子になりたいの?」
「そ、そんな魔法があるはずないだろう!」
「嫉妬に狂った魔女が作り出した禁呪、モゲリーを知らないのかしら?」
禁呪モゲリーとは嫉妬の魔女マハピクンが作り出した去勢魔法だ。
この魔法は相手が男性の場合は男根が捥げて、女性の場合は片乳が捥げる恐怖の魔法である。余り知られていない魔法だが、それは強力すぎるために魔術協会が戒厳令を出したからだったりする。
「そんな魔法は知らんわ! やれるもんならやってみろやぁ!」
「責任は取らないわよ? モゲリー!」
禁呪モゲリーは去勢を目的とした呪文だ。
だからなのか呪文を受けた相手は痛みもなく男根か片乳が零れ落ちる。
そして再生を防ぐために即座に傷口を塞ぎ傷自体を無かった事にするのだ。
モゲリーを受けた者は永遠に片乳か男根を失ってしまう。そう、目の前の盗賊の様に………
「ほら見ろ! 何も起こらないじゃない……か?」
「どうしたんです親分?」
自分の股間を執拗に触って青ざめる盗賊頭。
彼は自分の股にあるはずの物がない事にようやく気付いたのだろう。
「まだやるの?」
「……お前たち、撤退だ」
盗賊頭の急な撤退命令に盗賊たちは不思議そうな顔をするが、先に盗賊頭が店を出て行ってしまったので渋々あとを追うように店を出て言った。
「ノイくん。キミはあの盗賊たちに目を付けらちゃったみたいだし、自衛のために魔法の基礎だけは教えてあげるわ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
こうしてノイはカレンの弟子になる事になる。
店の前に盗賊頭の男根が落ちていることはまだ誰も知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます