(22)
同日ギルガンディス城。
城内では首を長くして待ち続けている
一人の男の姿があった。
人間で例えるならば20代前半とも思えるその男の体は細身で長身、だがその衣服の上からでも、それが鍛え抜かれた体である事が容易に伺えてしまうほどに彼の体は美しく引き締まっていた。
その男こそ、この城の城主。
ヤーガスタル地方をおさめている
魔王・ギルガンディス、その人であった。
『火竜王』との異名を誇るその彼は、その名の通り燃えたぎる火を連想させるような鮮やかな紅い瞳を持ち、深い暗赤色であるその髪はまるで灰の中でくすぶり続ける炎のような色をしていた。
そんな彼の特徴ともいえる『炎のような紅い瞳』は、現在憂いに満ちていた。
「…遅い!全く連絡もよこさんとは、
タリアのヤツ一体何をやっているのか…これではカジノに攻め入る事が出来ないではないか…!」
腕組みをしつつ、イラついた言葉を吐きながら玉座にもたれかかるギルガンディス。
そんな彼の元に、意図せず朗報が舞い込んできた。
「ギルガンディス様!只今我が城の敷地内で、例の双子と思われる男女を二名、捕らえたとの報告が入っております!」
部屋の入り口で彼の側近であるトカゲ兵が、きちんと敬礼をしながらはきはきとした口調でそう言った。
その瞬間、ギルガンディスの瞳からは先程までの憂いは見事に消え去り、同時に彼は明るい声をあげ答えた。
「でかしたぞ、グリース!二人には俺が自ら接見を行う!まずは二人を『尋問室』へ連れていってくれ。話はそれからだ。」
「はっ!!」
そう言ってギルガンディスは長いマントを翻すと、鼻歌なんぞ歌いながら軽い足取りで尋問室へと向かって行った。
◇◇◇
「ギルガンディス様!以上にございます!」
尋問室ではすでに黒い戦闘服に身を包んだ二名の身体検査が行われており、机の上には兵士達が彼らの衣服から取り出した複数の武器が並べられていた。
二人共仮面をつけている為その表情などは分からなかったが、多分背の高い方が男性で低い方が女性なのだろう。
同席していた兵士達も、それをあらかじめ考慮していたようで、女性側の検査はすでに侍女が行っていたようだ。
身体検査が終わると、侍女はギルガンディスに一礼をして静かに退室した。
「ん~…どれどれ?
拳銃に、拳銃に、拳銃に、拳銃に、拳銃に、拳銃に、拳銃に、ライフルとライフル。あとは散弾銃に光線銃に狙撃銃…その他もろもろは斧に刀に長剣に短剣が多数か。…これだけの武器を隠し持つ事が出来るとはな。…全く
そう言って机の上に並べられた武器を軽く弄りながら、呆れた表情で話すギルガンディス。
ギルガンディスはわざとイヤミっぽくそう呟きながらチラリと双子の方を見てみたが、二人は兵士に指示された通り両手を上にあげたまま、いまだ微動だにすらしない状況だった。
そんな彼らの様子を見て、ギルガンディスは退屈そうに小さく溜め息をつくと、座っていた椅子を動かし、彼らに背を向けながらこう呟いた。
「全く…仮にも俺は『火竜王』だぞ?
この程度の小さな火力で、この俺がどうにかなるとでも…」
彼がそう言い終えようとしたその瞬間…
「ぐわぁ!!」
彼らに付き添っていた兵士が呻き声をあげ、
その場に倒れ込んだ。
「お前…まさか…!!」
思わず振り向くギルガンディス。
だが時はすでに遅く、振り向いた彼の目の前にはすでに巨大な大砲が錬成されていた。
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