(18)
いまだ青く輝き続けている満月。
その月灯りに照らされながらデンタツは夜空の中を必死に羽ばたいていた。
この森を抜け、しばらく飛び続ければギルガンディス城だ。
『情報を確実に、そしていち早く届ける』
という事に自分の生涯のすべてと使命を燃やし続けているデンタツは、とにかく先を急いでいた。
いくつもの木々を横切り、この森の中でも特別大きく、そして目印になりそうなくらいに高く育った大木の横へと差し掛かった瞬間、突如としてデンタツの動きに激しい制限がかかった。
訳も分からずその場で羽根をバタつかせるデンタツ。振り向いたデンタツの瞳には自分の尻尾を強く捕らえて離さない、ジャクリーンの姿が映っていた。
必死に逃れようと、もがくデンタツ。
しかしジャクリーンはそんな彼の尻尾を決して離すことなどなく、そのまま自分の懐へと抑え込むと、自分の両足でデンタツの頬を強く挟み込み、そして人差し指でデンタツの額にある小さな角を押し込んだ。
額の角を押された瞬間、デンタツの瞳からは走馬灯のように今回のカジノでの出来事が映像として映し出され、そして同時にタリアが話すギルガンディスへの報告がナレーションのように再生されていた。
無言のままその映像を見終えたジャクリーン。彼女がデンタツの瞼を優しく撫で、彼の瞳を閉じさせると、デンタツの後頭部からは先程の
ジャクリーンはその記憶石を遠くへと投げ捨てると、そのまま別の方向に向かってデンタツ自身も投げ捨てた。
「ぷっ…くくく…
あーはっはっはっはッッ!!」
両手で自分の腹を抱え込み、こらえきれない様子で突然笑い出す彼女。
静かな森の中をそんな彼女の笑い声だけが大きく響き渡っている。
「あんな小娘にここまで出来るだなんて、そんなのはじめっから思ってなんかいなかったけれど…やっぱり裏で手を引いてる者がいたのね。…あのトカゲとつるんでるって事は…黒幕はギルガンディスか。」
ひとしきり笑い終えると彼女は、今自分が座っている木の枝の上で足をパタパタと揺り動かしながら透き通るような声で呟いた。
「最近ではカジノもあまりに退屈すぎて、久しく笑う事も話す事も忘れかけていたけれど、これからは面白くなりそうよね。
ねぇ?リオン。」
そう言って彼女は鈍く瞳を光らせると、数段高い枝の上で待機していた双子の一人に話しかけた。
リオンと呼ばれたその男は、そんな彼女の問いかけに答える様子などなく、ただ静かに今宵の大きな月を見つめ続けているだけなのであった。
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