(13)
全く同じタイミングで同じ構えをとり、そのまま戦闘態勢へと入る双子。
「あらら~…こりゃまずいわ。」
そう言って先程まで余裕だったはずのラミカの顔は急にこわばり、攻撃の手が止まった。
「どうしたの!?」
そんなラミカのあまりにも突然すぎる様子の変化にに驚いた私は思わずラミカの顔を覗き込んだ。
「どうしたも何も…あの双子達、どうやら私のお店の常連さん達だったみたいね。」
「どういう事!?」
「タリアも見たでしょ。あの仮面から突然飛び出して来た黒い戦闘服を…あれも実はこのハンカチ達と同じ…『魔燈衣』で出来ているのよ。」
どうやらこの『魔燈衣』という物は、ラミカの言うとおり、武器にも防具にも変幻自在に自由に形を変える事ができる便利な戦闘道具であるらしい。
もっとも私は今日の今日まで、この『魔燈衣』という代物がここまで普及している物だなんて全く知らなかったワケだけど…
ラミカは両手で合図を送り、突然自分の背後に佇んでいた巨大なハンカチの波の進行方向を変えると、そのまま会場の壁に衝撃を与え
大きな穴を開けた。
壁に穴を開けるという目的を果たした瞬間、集団で巨大な波の形を成していたハンカチ達は一瞬で布本来の柔らかさを取り戻し、ハラハラと元の1枚ずつの小さな布の姿へと形を変えていった。
「ごめんね~タリア!私、常連さんとは戦わない主義なの。…って事でここで離脱させてもらうわね!!あっ双子さん、これからも御贔屓にぃ~」
そう言ってラミカは丁寧にあたしと双子に一礼すると、自分のドレスからぶら下がっているリボン状の肩紐を両手で勢いよく引っ張った。
リボンを引っ張ると同時にラミカの背中で広がる大きな白い翼。
この時あえてラミカはこの事についての言及も何もしなかったが、この流れを見る限りきっと彼女が身につけているこのドレスも『魔燈衣』で出来た代物なのだろう。
ラミカは会場内に風を巻き起こしながら、自分の背負った羽根をはためかせると、そのまま自分が開けた壁の穴から会場の外へと羽ばたいて行った。
すぐさまその後を追う双子達。
会場の中には騒然としているカジノ客達と、その一連の騒ぎを茫然と眺めているあたしとジャクリーンの姿が残されていた。
「えっと…ごめんねっっ!!」
ふと我に返った私はそう呟くと、ジャクリーンの隙をついて彼女の片足に足払いをかけた。たまらず再度その場でよろめくジャクリーン。
私は完全にバランス感覚を失い、一瞬体勢を崩したジャクリーンの髪の毛から、すかさず金の髪飾りを奪い取った。
髪飾りを外した瞬間、体勢を整えようとしていたジャクリーンの体の動きも伴って、綺麗にまとめられていたはずの彼女の長い髪がサラリと胸元までおりてきた。
会場内の豪華な照明までもが反射して艶やかに輝く彼女のその美しい髪の動きに一瞬目を奪われながらも、私はそのままラミカと双子達の後を追う事にした。
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