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このカジノ。「スカーレット・ラグーン」という名前は、実はジャクリーンのみが着ることを許された赤いドレスの色に由来している。
その昔、この世界では人間と魔族が争い、一夜にして人類は大敗。
それ以降4人の魔王が大陸を4つに分かち、それぞれの国の統治を行ってきた。
そしてその4人の魔王のうち、現在空席となっているこのサルマリア地方の次期魔王候補に選ばれし者こそがジャクリーンなのである。
魔王にはそれぞれ『ダーク・リミテッド』と呼ばれるその者だけが独占して使用できる色と道具が定められており、その魔王が即位している期間に、同様の色でかつ同じ種類の物を使用する事は、国民にとって何よりもの禁忌であると定められている。
火竜王ギルガンディスは黄金の剣、冥王ザナ・タークは紫の宝玉、獣王リルドは白銀の冠。そしてジャクリーンが即位したあかつきには緋色のドレスが
もっともジャクリーンは現在魔王即位に向けての準備期間中であり、完全な即位こそはしていないものの、準備期間である現在でさえも「緋色のドレスは身につけない事」という御触れが国民全員にとって暗黙の了解となっているくらい有名な話である。
そんなご時世の中、しかも当の本人の目の前で堂々とそのドレスを見せびらかすという行為は、よっぽど頭の悪い世間知らずか、
「はぁい!初めまして、ジャクリーン!!
ここらでいっちょ喧嘩でもしない?」
ってな感じのフランクなノリで決闘を申し込んでいるのと同じ事であると言える。
ジャクリーンが私の一連の行動を見て、一体どのような解釈で捉えたのかは分からないがその殺意に満ちた眼差しを見た瞬間、私は不覚にも一瞬で体が固まり動けなくなってしまった。
息を呑むくらいの圧迫感を全身で感じ続けながらも、動かなくなってしまった体の中で唯一動かせる事のできた私の瞳は、無意識に未だ壇上に立ったままとなっている二人の男女の姿を捉えていた。
『双璧の番人』
アスターナ出身のこの美しい双子達の事を、
人々はそう呼んでいた。
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