(4)

「なんだラミカか…。」


安堵のため息と共に、明らかな呆れ顔を見せた私の反応に


「なんだとは何よー!!せっかく来てあげたのにぃっ!!」


と不満そうにぷぅっと頬を膨らませるラミカ。もちろん、言うまでもなく彼女も私達の味方であり、当然今回の計画において重要なメンバーである。


「…ってか今は一体どういう状況なの~?

どれどれ~?」


そう言ってラミカは私を強引に横に押し退けると、懐から取り出したオペラグラスで排気口の中を覗き始めた。


「相変わらず大盛況ね~。こりゃ毎晩毎晩儲かりますわ。」


そんな呟きをしながら自身の身に纏っているドレスをヒラヒラとはためかせるラミカ。


細部にまで細やかなレースがあしらわれているそのドレスは、遠目から見てもかなり高級な代物であることが伺える。

そもそもそのドレスの原色すぎる鮮やかなその色が、この薄暗い空間の中ではとにかく刺激的でとにかく目に悪い。


そんなお気楽な彼女の様子を見て、思わず自分達が現在身に付けている黒装束とラミカのきらびやかドレスを見比べる私とトカゲ兵。


「ところでラミカ。お前はそんな派手な格好で、一体どこから忍び込んで来たんだ?」


相変わらず楽しげに排気口の中を覗き込み、ドレスをヒラヒラさせ続けているラミカに向かってトカゲ兵が怪訝そうな表情でたまらず問いかけた。


「どこって~…そんなの入り口から堂々と入ってきたに決まってるじゃない。」


あっけらかんと答えるラミカ。


「堂々と入り口からだと!?表にいた警備の奴らはどうしたんだ!?」


慌てて大声となってしまうトカゲ兵に対して


「警備ぃ~?そんなモノ、このラミカ様にとってはノープロブレム。これさえあればね。」


そう言ってラミカはまたもや懐から一枚のカードを取り出した。

金色に輝くそのカードを見た瞬間…


「ゴールドパスぅぅぅっっ!?」


私とトカゲ兵が同時に発した声がものの見事に綺麗にハモった。


ゴールドパスとは、このカジノで発行されているごく一部の富裕層のみに与えられているカードであり、経済的にも社会的にも信頼のおける上物の常連だけが手に入れられる無制限の入場許可証である。


つまりそのカードさえあればいつでもかつでも年中無休。好きなだけこのカジノに出入りできちゃうってワケである。


どうりでこっちは必死に闇に紛れ込もうと工夫に工夫を重ねて、オシャレ感など完全に無視しまくった全身見事な黒コーデで来たというのに、この子は目が痛くなっちゃうようはド派手衣装で登場出来たワケだ。


…にしても、こんなごく一部の選ばれし者しか手に入れられないようなカードを持ち歩いているなんて…この子は一体何者なのだろうか。


キラキラと光輝くそのカードを前にポカーンと口を開けたまま固まっているあたしとトカゲ兵の様子を見て気を良くしたのか、ラミカはこれまた懐から懐中時計を取り出し微笑んだ。


「…さて、お二人さん。

そろそろ時間ですわよ。」

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