第15話 愛のゆくえ〜夏の嵐

扉を開けた風は

夏の嵐が 運んできた

愛の宿命


離れられない

離れてはいけない


溢れる想い

身を焦がす心

これほど感性が似ている

気持ちの通じ合う

遥か彼方からの

めぐり逢い


でも人の心は

あまりに弱い

鏡のような池も

いつしか

さざ波が立ち

真実を写せなくなる

歪んだ景色

木の葉は

何処へも沈めずに

波に任せて

湖面を揺らゆら漂い

真実の景色を消す


夏は過ぎ

秋が静かに近づき

舞い散る葉の中に

私の心は埋もれる


飛び立てぬ虫けらのように

埋もれ 腐り 朽ち果てる

もはや私の心はどこにもない

ただ 夏の嵐を待ち望むこと

それは匂いだけのことか


陽炎の焦げた姿

実態も伴わず

泣くこともできない


愛や真実が

私を滅ぼすことにしか

ならないのなら

私は春になる前に

雪も嵐も桜もいらない

普通のごくありふれた午後

想い出の地からは程遠い

縁もゆかりもない場所で

消えてしまおう

何も語らず

ただ 一編の詩を書いて

誰かに伝える為ではない

愛する人に残す為ではない

生きられなかった自分自身への

ただの感傷 


私は言葉を憎む

私からあなたを奪った言葉を

でもそれは

私が多くを望み過ぎ

知りたがり過ぎたのかもしれない

雁字搦めにしてしまった

あなたの心


悪かったとも

許して欲しいとも

思わない

ただ 時々は

想い出して 泣いて欲しい

多分あの愛は

真実だったのだと

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る